研究課題/領域番号 |
24730045
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 妙子 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 准教授 (50313060)
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キーワード | スウェーデン / 社会保障法 |
研究概要 |
平成25年度に実施した研究に内容および成果は、以下のとおりである。 1 スウェーデンの生計扶助制度の仕組みについての調査を、昨年度に継続して行った。 2 スウェーデンの失業保険制度の仕組みについて、その受給要件、支給水準、受給者の就労意欲への配慮と給付制限、失業者に対するカバー率といった点を明らかにすることに取り組んだ。その結果、同国の制度には、失業保険の主たる受給要件である「失業」の概念や、自己都合退職や故意による失業の延長に対する給付制限といった点で、我が国の雇用保険制度との共通点も多く見られることが分かった。しかし、同国では失業保険制度の主要部分が任意加入となっているため、労働者に占める失業保険加入者の割合が低く、ひいては失業者に対する失業保険給付のカバー率が低いことが判明した。同国では、職業訓練等の労働市場政策への参加を条件に支給される、わが国の休職者支援給付に類似する給付が存在するが、この給付を考慮に入れても、何らの所得保障も受けられない失業者が多く存在する。このことは、同国における生計扶助の受給状況に大いに影響していると指摘されている。 3 わが国の社会保障制度において「最低限度の生活」の保障に関わる制度、すなわち、生活保護や福祉制度について、現行制度をめぐり生じている問題を幅広く検討した。 4 生活保護の受給率・受給者数が過去最高を更新し続けているわが国の現在の状況に照らすと、1ないし3の研究により得られた成果は、生活保護をはじめとするわが国の最低所得保障制度のあり方、とりわけ制度間の関係性を考える上で、重要性を有する。今年度は、研究成果を各地の研究会等で積極的に発表するように努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施状況報告書に記載した通り、本研究は、当初予定していた最低保障年金の研究をいったん停止し、生計扶助および失業保険に関する研究を先行させている。これは、わが国における政治的・社会的状況の変化を受けた研究計画の変更であるが、研究計画内での重点の置き方ないし順序の変更に留まるものであり、研究の全体像を変更するものではない。 また、平成25年度はスウェーデン・ルンド大学法学部において2度の国際ワークショップに参加し、研究成果の一部を発表する予定であったが、うち1つが先方都合で無期延期となった。しかし、これに代えて、国内の研究会に積極的に参加し、研究成果の発表に努めた。 したがって、全体としては、研究はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究成果を踏まえて、平成26年度以降は、わが国の生活保護制度・雇用保険制度とスウェーデンの生計扶助制度・失業保険制度のより綿密な比較検討を行いつつ、他の社会保障制度(年金、社会福祉等)に視野を広げ、最低所得保障政策の制度横断的な検討を進めてゆく予定である。また、引き続き、国内外の研究会に積極的に出席し、研究成果の一部を随時発表してゆく。
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