研究課題/領域番号 |
24730046
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
新屋敷 恵美子 山口大学, 経済学部, 准教授 (90610808)
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キーワード | Nexus / 契約外的関係性 / 合意 / 労働契約成立の法構造 |
研究概要 |
本年度は、①Mark Freedland教授(Oxford University)とNicola Countouris(University College of London)にインタヴュー調査を実施した。また、②契約外的関係性における労働契約の役割の確定のために、個別的労働関係の基礎となる労働契約に含まれる合意の構造や内容について研究し、第126回日本労働法学会で報告した。 ①のインタヴュー調査では、両教授の著作であるThe Legal Construction of Personal Work Relations(OUP, 2012)に関し、(i)契約外的関係性(Nexus)を含めた新たな労働法の見通し、(ii)Nexus概念が果たす役割、(iii)「人的労働関係」概念が果たす役割、(iv)労働法における「人格」概念の果たす役割、等を伺った。また、同インタヴュー調査ではないが、別の機会に、Cambridge大学のSimon Deakin教授に労働法における契約外的関係性の可能性について聞き取り調査を行い、労働法へのNexus概念導入とその弊害についても教示を受けた。 研究計画では、労働法への契約外的関係性(Nexus)の導入は、契約(合意)概念の限界に基礎づけられるという仮説を立てていた。そこで、②の報告において、労働契約に含まれる合意の構造やその内容について基礎的な分析を行った。これにより、労働契約の基本的な構成要素(契約の成立要件を充足する合意の内容)を析出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、イギリスにおける歴史研究や具体的な法制度のあり方について研究する予定であった。しかしながら、それ以前に、日本における問題の把握(労働契約の中の合意の構造分析など)の重要性に気づき、そちらに注力せざるを得なかった、という点が研究の遅れの原因である。 ただ、本年度の研究は非常に基礎的な研究であることから今後の研究の展開にとって大いに有益であること、また、イギリスにおけるインタヴュー調査で研究の方向性がより具体的になってきたことは、遅れを取り戻した上で、より社会の実態に合った具体的な理論展開に寄与するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、労働法におけるNexus概念ないし契約外的関係性の展開に向けた総論部分を構築することとする。 イギリスでは、Hugh Collins教授(LSE)により、Networkという新たな契約外的関係性に関する議論が見られることから、これまで着目してきたNexus概念と比較検討し、その結果、労働法における契約外的関係性の構築に向けた構想について執筆する(平成26年度の夏に、Hugh Collinsにインタヴュー調査に行きたいと考えている)。 また、研究計画書に挙げた、イギリス労働法における契約外的関係性に関する具体的な法制度について検討し、各論的考察も進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度(平成25年度)に購入予定の図書の実際の発行日が遅くなってしまったため、予定していた図書を購入することができなかったため。 予定していた図書購入に使用する。
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