研究課題/領域番号 |
24730048
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
今川 奈緒 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60509785)
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キーワード | 障害児教育法 / 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / 学校教育法(施行令) / インクルージョン / IDEA / LREの原則 / 無償かつ適切な公教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の障害児教育法制におけるインクルージョンと「適切性」の問題について検討を行うことである。平成25年度の研究推進方策として、①日本の障害児教育法制の改革案の検討(内閣府と文科省の各委員会の提案について)、②日本の障害児教育をめぐる法制度の検討、③アメリカ法との比較検討を挙げていた。 ①、②に関する研究成果としては、菊池馨実、川島聡、中川純編『障害法』(成文堂、近刊)の第9章「障害と教育法」において、日本の障害児教育法制及び、改革案についてまとめた。また、①~③の統括として、社会保障法学会(2014年5月24日)において報告を行う予定である。なお、当該報告については、2014年1月12日の東京社会保障法研究会(早稲田大学にて開催)において、学会プレ報告を行っている。なお、障害法に関する研究成果として、今川奈緒「公職選挙法一一条一項一号の違憲性と成年被後見人選挙権確認訴訟 : 東京地判平成二五年三月一四日(賃社一五九〇号二八頁、判時二一七八号三頁)について」賃金と社会保障1599号(2013年)もあげられる。 上記①~③の研究成果から、教育の「場」と「質」が保障されて、初めてインクルーシブ教育とは実現されるものであり、インクルーシブ教育を強調するあまりに特別支援学校を否定的にとらえること、あるいは、特別支援学級、特別支援学校の存在を前提にして、適切な支援を行うことで通常学級に在籍できる可能性を十分考慮することなく、就学先の決定を行うことは、インクルーシブ教育の本質を見失うことになりかねないとの見解を導き出している。障害児教育法制における「適切性」とは、「場」と「質」を共に保障することであり、その実現に向けた法制度の在り方について引き続き研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】で記したように、平成25年度の研究推進方策については、ほぼ予定通りに行ったが、現地調査のみ行うことができなかった。本研究の目的遂行の手段として、アメリカ法との比較検討を行うことを掲げているが、その実施に当たっては法制度、理論上の検討を行うだけでなく、現地調査を行い、法学研究者、学校関係者等当事者にインタビューを行い、インクルーシブ教育の実態を把握しることが必要である。したがって、現地調査を行うことができなかったことふまえて、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究成果から、障害児教育法制における教育の「適切性」の実現には、「場」と「質」を共に保障することが不可欠であると考えられる。「場」の保障としては、インクルーシブ教育を前提とした場合、究極的な目的として普通学級において適切な教育を受ける機会が確保されることがあげられる。これに対して、「質」の保障としては、合理的配慮を行う上での基準となるベースラインの設定が問題になるが、障害児の教育を受ける権利の実体が、非障害児のそれと等しいものとされるのか、あるいは両者に相違があるのか、相違がある場合それが許されるのか等について、十分な検討がされてこなかった。したがって、今後の研究推進方策として、非障害児に保障されるべき教育を受ける権利の実体について検討を進めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
例年11月に開催されるEducation Law Association に参加する予定であったが、校務と重なり参加することができなかった。当該学会においては、障害者教育法の専門部会が設けられており、アメリカ法制における最新の動向を知るために非常に重要な機会である。 2014年の11月に開催される、Education Law Associationに参加するための渡航費用等として利用する予定である。
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