研究課題/領域番号 |
24730060
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澁谷 洋平 熊本大学, 法学部, 准教授 (20380991)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イギリス / マネー・ロンダリング / 犯罪収益 / 組織犯罪 |
研究概要 |
平成24年度は、イギリスにおけるマネー・ロンダリング(以下「ML」)規制の実体法研究として、ML規制の根拠法である2002年犯罪収益法(Proceeds of Crime Act 2002(以下「POCA」))の制定過程の議論を整理した上で、「犯罪収益(criminal property)」の定義と諸要素、「認識、疑念、合理的理由」(主観的要素)など、各犯罪類型に共通する概念、POCA327条から329条で規定される具体的な犯罪類型(隠匿等罪、計画関与罪、および所持・使用等罪)の客観的および主観的な成立要件と、犯罪を否定する抗弁事由、本罪とその他の類似犯罪(1968年セフト法22条、1994年薬物犯罪法49条、1988年刑事司法法93C条など)との関係などについて、判例の動向と理論の状況を踏まえつつ、整理・分析を行った。 また、テロ関連のMLを特別に規制する2000年テロ法(Terrorism Act 2000)15条以下の各犯罪の成立要件についても、併せて整理・分析を行った。 さらに、次年度以降の研究課題に関連する各犯罪の量刑の動向、正式起訴状の記載方法などの手続、刑の執行などについても、現時点で簡単な整理を行った。 今年度の研究においては、イギリスにおけるML犯罪の成立要件や抗弁事由に関する議論を詳細に分析することを通じて、本研究の基礎(出発点)を形成することができた。また、同国の規制が犯罪収益を促進する「計画への関与」や、犯罪収益の「所持」をも捕捉する点で、国際的なML規制に照らし独自性を有するものであることも明らかとなった。これらの研究内容は、次年度以降の手続法研究、法執行研究と接合させ、諸外国のML規制をも視野に収めつつ日本における望ましいML規制の在り方を探っていく上で、有用なものになると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、平成24年11月より手続法研究(第2期研究)に着手する予定であったが、実際には第1期研究の完了が遅れ、今年度中に第2期研究を必ずしも十分進めておくことができなかった。 研究が遅れた主たる原因は、参考文献が多岐にわたり、その精読・分析に時間を要したことに加えて、イギリスのML規制がテロ関係の特別法にも及んでおり、これを規定する2000年テロ法がその後数次の改正を経ていることもあって、相当複雑な構造を有していたため、この点の研究に予想外の時間を要した点にある。 もっとも、当初の研究計画において、第2期研究にはかなり余裕のある期間を設定していたので、計画通りに研究が進捗するよう、既に開始している第2期研究を平成25年度4月より速やかに再開し、可能な限り8月ないし9月にはこれを終えられるよう研究に専念したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の第1期研究では、想定外の時間を必要とせざるを得なかったが、第1期研究を行う中で、既に第2期研究の内容に関連する事項も頻出しており、その都度整理しておいた部分があるほか、第1期研究を通じてイギリスのML規制の概要が把握できたので、今後の研究にはより具体的なイメージをもって臨むことができる。また、第2期研究では、もともと余裕をもたせた期間を設定したという事情もあることから、第1期研究ほどの研究期間を要するものではなく、むしろこの期間において、研究の若干の遅延を取り戻すことができる見込みである。 このような事情から、平成25年度も、当初の研究計画を変更することなく、研究の速度を上げながら、第2期、第3期へと順次研究を進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究が当初の研究計画よりも3か月弱ほど遅れ、第2期の本格的な研究に際して必要な経費として計上した物品費や旅費等を完全に執行することができなかった。 しかし、既に第2期研究に移行しており、参考図書・資料や情報整理のためのPCその他周辺機器など、必要となる物品が相当数生じているほか、平成25年度には第1回目の海外調査研究を予定していることから、平成24年度分の残額は、平成25年度請求(予定)額と併せて、速やかに執行することになる見込みである。
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