研究課題/領域番号 |
24730060
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澁谷 洋平 熊本大学, 法学部, 准教授 (20380991)
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キーワード | イギリス / マネー・ロンダリング / 犯罪収益 / 組織犯罪 |
研究概要 |
平成25年度は、イギリスにおけるマネー・ロンダリング(ML)規制の手続法研究(第2期研究)として、ML規制の根拠法である2002年犯罪収益法(Proceeds of Crime Act 2002)第2章(6条以下)に規定される「刑事没収(criminal confiscation)」、同法第5章(240条以下)に規定される「民事的回復(civil recovery)」、並びに同法第8章(341条以下)に規定される「捜査手続」といった、マネー・ロンダリングの刑事手続に焦点を当て、その内容と理論的及び実務的問題について調査・研究を進めた。 今年度の研究においては、刑事没収制度の構造、従来の制度との異同、1998年人権法(Human Rights Act 1998)第6条(公平な裁判を受ける権利)や第7条(遡及処罰禁止)、第8条(均衡性原理)との関係、没収対象となる財産の確定手続、刑の量定との関係、民事的回復制度の構造、対象財産の意義・範囲、回復手続、捜査機関による捜査手続などに関する正確な理解を得るとともに、そこに内在する法的問題点に関する重要判例を調査することで、判例の基本的な動向・姿勢を把握することができた。 今年度の研究内容は、イギリスの刑事手続の特殊性が強く反映されていることに加えて、犯罪収益法の実際上の運用と関係する部分も多いことから、平成26年度に実施予定としている法執行研究(第3期研究)、及び日英比較研究(第4期研究)にとって、非常に貴重なものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度研究計画では、平成25年10月より、法執行研究(第3期研究)に移行することを予定していたが、これが実現できなかった。 その理由は、平成24年度における第1期研究の遅延が平成25年度の第2期研究の開始時期に影響を及ぼしたこと、当初、第2期研究には十分な期間を割り当てていたものの、イギリスの刑事手続の独自性・特殊性と、諸般の事情により予定していた海外調査研究を断念せざるを得なかったこともあり、2002年犯罪収益法の手続的内容を文献・資料のみから正確に読み取ることに予想以上の時間を要したことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は直ちに法執行研究(第3期研究)に着手するとともに、当初計画していた研究期間を変更・短縮させる形で、日英比較研究(第4期研究)を遅くとも平成26年12月までには完了させ、研究総括(第5期研究)に繋げられるよう、研究を進めたい。 併せて、研究が効率的に進捗するよう、準備が整い次第、早い時期に海外調査研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には第1回目の海外調査研究を予定していたが、諸般の事情により実施を断念したため、海外渡航費(旅費)、及びそれに関連する機材費(ノートPC購入費)や人件費・謝金の執行がなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 もともと平成26年度に第2回目の海外調査研究を実施する予定であったが、第1回目の調査(不実施)分を補うため、当初の計画より長期にわたってイギリスに滞在し、調査・研究に従事する形で計画を修正したい。また、新法制定や法改正の多いイギリスの状況を正確に把握するため、平成26年度も最新の文献・資料を入手する必要が生じている。 以上のような海外調査研究期間の修正、並びに当初の予定を超える物品費の必要性から、平成26年度における旅費及び物品費の増大が見込まれるため、申請・交付決定額に沿った研究費執行が可能であり、また必要であると考えている。
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