研究課題/領域番号 |
24730060
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澁谷 洋平 熊本大学, 法学部, 准教授 (20380991)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イギリス / マネー・ロンダリング / 犯罪収益 / 組織犯罪 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず、第3期研究として、イギリスにおけるマネー・ロンダリングに関する「法執行の状況」を調査した。同国の法執行機関(金融サービス局(FSA)や財務局(HM Treasury)の試算では、マネー・ロンダリングの規模は100億ポンドを超えるとされ、2002年犯罪収益法のほか、2007年資金洗浄規則などに基づき、国連協定やビエナ協定(1988年)、FATF勧告、EU指令などの要請を超える形で、リスク・ベイスト・アプローチ(RBA)を全面的に展開している。また、法執行に際しては、2007年規則、FSA資金洗浄規則、共同資金洗浄規制団体指針といった下位規則が重要な地位を占める点で、豪州やカナダなどと対照的な構造であることも確認された。さらに、実際の機関として、財務局、内務省、金融サービス局のほか、従来同国の資金情報機関(FIU)であった重大組織犯罪局(Serious Organized Crime Agency)の組織や活動状況について調査した。もっとも、SOCAは2013年10月に廃止され、国家犯罪局(National Crime Agency)にその権限が移譲されており、継続調査が必要である。 次に、第4期研究として、第1期から第3期にわたるマネー・ロンダリング規制の問題について、日本法とイギリス法の比較・検討を行った。イギリスはRBAを先進的に展開していることから、犯罪類型・範囲、没収や回復手続の厳格さといった点で、国際的基準を後追いしているといわれる日本と顕著な相違が確認された。日本でも、数次にわたる法改正に加えて、FATF第4次勧告を受けた警察庁の懇談会報告書が公表されるなど、RBAの重要性が認識されつつある状況にあり、イギリスの現状と課題は、今後の方向性を検討する上で、重要な参考になると推測される。 さらに、第5期研究として、研究総括と論文執筆に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、平成26年度に完成する計画であったが、平成25年度の第2期研究が刑事手続法や人権法、EU法などに及ぶ内容であったことから既に遅れが生じていた上、イギリスの研究協力(情報提供)者との日程調整がまとまらず、海外調査に出ることができなかったこと、イギリスの法執行機関が複雑多様である上、近時の改廃もあって現状を正確に把握することが容易でなかったことから、平成26年度の第3期研究(法執行の状況の研究)にも予想以上の時間を要した結果、第4期研究(日英の比較検討)の完了と、第5期研究(研究総括・論文執筆)の着手に留まり、研究の完成に至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度前半中(既に日程調整を行い、候補期間を設定済み)、速やかに海外調査研究を行い、本年度後半(10月~12月ころ)には研究会での最終報告を経た上で、第5期研究を完成させ、遅くとも本年度中に研究論文を公表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究協力(情報提供)者との日程が整わず、平成26年度に予定していた海外調査研究を断念せざるを得なかったため、当初予算(旅費、人件費・謝金)を執行することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度前半中に海外調査研究に出る計画であり、当初の研究計画に沿った研究費執行を行う予定である。
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