研究課題/領域番号 |
24730064
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三宅 新 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30621461)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 商法 / 会社法 / 当事者自治 / 定款自治 |
研究概要 |
本研究は、様々な会社形態を分析することによって、それらに存在する当事者自治の基本理論を導くことを目的としている。その中心をなすのは、自分が東京大学に提出した学位論文であり、それを発展・深化させることから本研究は始まっている。1年目は、その発展・深化を進めるべく、ドイツ法を中心とした当事者自治の研究に費やしてきた。それによって、今まで検討対象としてこなかった他の会社形態に関しても理解が深まった。そのため、基本理論を導く上での比較対象となるべき素材は増えたと言って良い。 今までの本研究の中心となる内容は、会社の定款は必ずしも組織法としての内容に特化するのではなく、人と人とが交わす契約の一つであるから、取引法としての側面も持っており、その取引法の側面を考慮することによって当事者が真に意図した問題解決が導かれる、というものである。この内容を導く上で、本研究はソフトローの視点も採り入れている。そのため、今までの伝統的な法学研究とは異なる視点から、自主的ルール等を検討していくことが必要となり、そのための研究・報告を行なった。 以上の研究内容を導くための具体的な活動として、昨年度は研究報告2回、雑誌への投稿1回を行なった。また、それ以外にも研究会に積極的に出席し、議論をするなどして自らの研究への理解を深めていった。くわえて、本年度の研究報告や論文執筆のためのベースとするべく、ドイツ会社法の論文や判例を読んでいった。本年度は、アメリカ法へと比重を移していくところ、準備は整ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、ドイツ法の研究を中心に展開していった。とりわけ、従来の自らの研究を発展させるべく、人的会社を中心とした当事者自治に関しての研究を進めていった。とりわけ、生命保険会社がその設立形態として選ぶことの多い相互会社についての当事者自治に関する研究も行った。内容としては、ドイツのLorenzという学者の学説、および、彼が反対している下級審裁判例、さらに、その上告審である連邦通常裁判所判例を分析した。それにより、相互会社の場合、契約者が社員となることから、その定款の内容についても消費者法と同様の法理が働きうる以上、相互会社と株式会社とで定款解釈を分けるという示唆が得られた。 このように、ドイツにおける様々な会社の当事者自治の可能性を探るのは、当初予定していた計画の範囲に収まるものであり、順調に研究が進んでいると言える。 また、北海道大学の民事法研究会や東京大学の商法研究会において報告を行なった。内容としては、直接会社の当事者自治に結びつくものではないが、証券会社の自主的ルールに関わるもので、これは当初自分が予定していたソフトローに関するものである。ソフトローは、現在最新鋭のトピックであり、本人たちが国が制定したわけでも実効力が担保されているわけでもないルールとして、どのような拘束を感じているかという内容である。これは、会社を設立する場合の設立形態の選択に際して、重要な影響を及ぼしている分野であるため、当初の予定通りそれに関する知識を深めるのに役立った。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初の予定どおりである。 今年度は、アメリカ法にも手を付けたい。とりわけ、アメリカでは組合形態の様々な会社形態が登場しているため、事業を展開する者がどのような理由でどのような会社を設立するのかという点に興味がある。 今までのドイツ法の研究は、わが国の法制度の源になった法制度に根付いていたため、比較しやすい共通の背景を有していた。しかし、アメリカ法の場合、ドイツ法とは対照的な影響力を有している。すなわち、ドイツの法制度を先に輸入してそれに併せてわが国の法文化が発展していったのに対し、アメリカ法の導入は戦後の特色であり、法文化とともに日本に輸入したきらいがあるからである。そのため、アメリカの法文化について、多くの時間を割くことになる。その結果、会社法などの組織法に限らず、多くの分野についてアメリカ法を研究する。 各論的な分野でいえば、現在の日本の会社法では合同会社という会社が制度成立後7年を経たため、その当事者自治の可能性について研究していく。その研究の比較対象となるのは、合同会社制度の母法を有するアメリカ法である。もっとも、アメリカ法を参考にしたとはいえ、現在の法の規定はドイツ法に倣った合同会社・合名会社と同じ分野に入れられている。このカテゴリーがわが国にどのような影響を及ぼしているかについても探る。 このように、昨年度までのドイツ法および今年度取り組むアメリカ法の影響を踏まえた上で、わが国の法制度に対して応用できる点を発見していき、わが国への解釈論・立法論を展開する予定である。その過程の成果としては、今年度末まで、翌年度の私法学会の報告に向けて、法学協会雑誌への投稿を考えている。 また、昨年度同様、本学の民事法研究会に積極的に参加するだけでなく、自分が所属している東京大学商法研究会においても報告・発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
発注していた書籍の入荷が絶版等で思うようにいかず、多少の残余が生じている。年度内に購入できなかったこれらの書籍(もしくは類書)の購入費に、この分を充てる予定である。
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