研究概要 |
申請時の研究計画に従い、Kraemer, Das besitzlose Pfandrechtの主要部分について、読書会を通じて読解を進めた。これは、ローマ法源についての知識を深めるとともに、今後ローマ法学の文献を読み進めるために必要な準備作業である。 この読書会を継続する形で、フランス法史研究として、18世紀フランスにおけるローマ法学の文献であるPothier, Pandectae Justinianae in novium ordinemのうち、Liber 20の部分について、抵当権の効力、とりわけ抵当不動産の第三取得者に対する追及権を内容を意識して読解を進めた。この作業は、フランス抵当法史におけるローマ法学の影響を検出するための起点を作る作業であり、現在も継続中である。これと同時に、慣習法学に関するこれまでの研究の精度を高めるため、申請時の研究計画に加えて、du Moulin, Tractatus contractuum et usurarum, redituumque pecunia constitutorumの読解も独自に行った。これらをもとに、従来の研究成果に手直しを加え、「法学協会雑誌」において研究成果の公表を開始した。 これらと並行して、ドイツ法史研究として、Gierke, Deustches Privatrecht, Bd. 3, Schuldrechtの読解も独自に行った。申請時の研究計画では、より本格的な歴史研究であるGierke,Schuld und Haftung im aelteren deutschen Rechtを読解し、これを起点としてドイツの「債務なき責任」論の学説史をめぐる研究を展開する予定であったが、そのための準備としてGierkeの主張の概要を理解するため、上述のような作業が必要となった。この作業は現在も継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、Kraemer, Das besitzlose Pfandrechtの主要部分についての読解を終えることができた。フランス法史に関するその他の文献についても、計画通り読解に着手できており、さらに、当初の計画にはなかった文献の分析も進めることができた。研究成果の公表も、予定通り開始することができた。 他方で、ローマ法学に関する現時点での研究成果は、現在公表中の論文にも部分的に反映させることができたものの、全面的に公表できる段階には至らなかった。関連する文献の収集も、残している部分がある。ドイツ法研究の部分では、研究計画を変更した関係で、Gierke,Schuld und Haftung im aelteren deutschen Recht自体の読解には未だ達していない。
|
今後の研究の推進方策 |
フランス法史研究に関しては、申請時の研究計画に従い、引き続き、Pothier, Pandectae Justinianae in novium ordinemを読書会を通じて読み進め、さらにそれを起点としてローマ法学の文献を掘り下げて収集・読解していく予定である。フランス法史におけるローマ法学の分析については、すでに今年度行った法学協会雑誌における成果公表への反映とは別に、より本格的な形での成果の公表を検討していきたい。法学協会雑誌における成果の公表も計画通り継続し、今年度すでに法学協会雑誌で公表した部分についても、計画通り、日本私法学会での報告を通じてあらためて公表を行う予定である。 ドイツ法史研究については、今年度に引き続きGierke, Deustches Privatrecht, Bd. 3, Schuldrechtについて読解を進めていき、当初の計画にあったGierke, Schuld und Haftung im aelteren deutschen Rechtの読解と、これを起点としたその他の文献の収集・調査に到達したい。
|