研究課題
2015年度における主な研究実績は、下記の通りである。第一に、比較法的研究に関しては、まず、日本と比較的共通点の多いドイツにおける状況について、引き続き検討を進め、特に最近の欧州消費者ODR指令への対応状況(消費者紛争解決法を中核とする)などについて、新たな知見を得た。そこでは、消費者紛争におけるADRのあり方をめぐって、それが従来の消費者保護の水準にどのような影響を与えるのか、言い換えれば、従来消費者実体法上認められてきた法的保護の水準がADRへの誘導により損なわれることにならないのか、というある意味では古典的な問題が大きな争点とされており、示唆に富むものがある。また、具体的な施策としても、消費者紛争解決法においては、公的認証を受けた消費者調停所を軸とした対応が想定されている点で、国による関与がより踏み込んだものとなっているのは、紛争の特性に応じた国の関与のあり方を示す点で、日本法にとっても興味深いものといえる。また、同じく比較法的な観点から、主として少額事件における各国のADRの活用状況について調査を行い、裁判手続との機能分担のあり方に関しての基礎的な資料を得ることができた。この研究成果の一部は、2015年に開催された国際訴訟法学会において、報告することができた。第二に、国によるADR促進の目的と民事訴訟制度の目的との関係に関して、前年度の研究成果を踏まえて分析の深化を試みた。具体的には、民事訴訟制度及びADRの双方を、ともに当事者の自己決定のための条件ないしその豊穣化の手段として位置づける私見に関して、そこで問題となる「自己決定」の観念をさらに分節化する必要性がより明確になったことが、収穫であったといえる。こうした基本的視座の構築は、今後、上記比較法的研究の成果とのフィードバックを通じて、日本法に関する立法論を含む政策的提言に活かすことができるものと期待される。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
ICCLP Publications
巻: 13 ページ: pp. 61-74
法の支配
巻: 178 ページ: 10-39頁
ESPLUGUES & MARQUIS (ed.), New Developments in Civil and Commercial Mediation: Global Comparative Perspectives
巻: - ページ: pp. 367-392