研究課題/領域番号 |
24730072
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40386529)
|
キーワード | 専門家 / プロフェッション / 専門職法人 / 専門職会社 / 法人法 / 弁護士法人 / 監査法人 / 医療法人 |
研究概要 |
専門家(弁護士、医師、公認会計士等)がその専門職を行うための組織の法的形態について、フランスでは非常に特色ある制度が置かれている。その特色として、会社形態での専門職の実施が認められていること(以下、「専門職会社」という)、会社法の特別法として「専門職民事会社法」および「自由職遂行会社法」が定められており全ての専門家に適用されることが挙げられる。そこで本研究では、総論としてフランスの専門職会社法制を概観したのち、個別論点について論じることとした。既に報告したように本研究への着手が遅れたため、平成25年度も引き続き、専門職会社法制一般について検討を行なった。 参考文献リストにもとづき文献の入手・精読を行ったが、仏語文献としては、「自由専門職」概念・専門職会社法制一般・専門職民事会社法・自由職遂行会社法・各種専門職における専門会社法の適用に関する文献が挙げられる。邦語文献としては、フランスにおける各種専門職・専門職会社法制に関するもの、日本における各種専門職・各種専門職法人法制(弁護士法人、医療法人、監査法人等)に関するもの、フランスにおける会社概念その他団体に関するもの、日本における会社法総論(民事会社・商事会社の区別、商人性、営利性等)に関するものが挙げられる。 本研究課題の総論にあたる論文では、フランスにおいてなぜ会社形態での専門職の実施が認められるに至ったのか(日仏の会社概念の対比)、なぜ各種専門職に共通する制度を置くことが可能であったのか(日本の各種専門職法人制度の立法形式との対比)、なぜ株式会社・有限会社形態の専門職会社(=自由職遂行会社)まで認められたのかといった点を明らかにしたい。また、専門職の実施という会社目的に照らし、一般の会社制度がどのように特別法化されているのかという点に着目して、論文を執筆する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度は、日本私法学会において個別研究報告を行なったため(「フランスにおける会計監査役の民事責任」)、学会(10月)までその準備に専念せざるを得なかった。また、平成24年度に提出した博士学位論文(平成25年度7月に学位取得)の公表の一貫として、「フランスにおける会計監査役の対会社責任(2)」の執筆もしていたため(平成26年1月入稿)、本研究への着手が遅れた。 もっとも、平成26年1月以降は本研究に専念することができた。平成26年度はまず、6月末締切の所属研究機関の大学紀要(新潟大学「法政理論」)に、本研究課題の総論にあたる論文を提出する予定である(「フランス専門職会社法序説(仮題)」)。また、夏期休業期間には専門職会社法制の個別論点に取り組み、論文を完成させる予定である(当初の研究計画においては、平成25年度の研究課題としてフランスの専門職会社の社員の責任の検討、平成26年度の研究課題としてフランスの複数専門職会社法制の検討を掲げていたが、研究内容等の関係から、先に複数専門職会社法制について検討することとした)。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は第一に、フランスの専門職会社法制一般に関する論文を完成させる。「9.研究業績の概要」に掲げた観点から、文献の精読・論文の執筆を行う。 第二に、フランスの複数専門職会社法制に関する論文を執筆・完成させる。フランスでは古くから複数の専門職を実施しうる会社に対する需要があり、1966年専門職民事会社法・1990年自由職遂行会社法は、複数専門職会社制度に関する規定を置いた。両法律において各種専門職への適用はデクレに委ねられたが、各種専門職への適用デクレの多くは複数専門職会社の設立を認めていない。他方、自由職遂行会社法において近年、異なる専門職を行う自由職遂行会社を傘下に置く持株会社の設立が許容され、それを認める適用デクレも公表されるに至った。そこで本研究では、複数専門職会社に関する伝統的議論、専門職民事会社法・自由職遂行会社において複数専門職会社制度が導入された経緯とその失敗の原因、上記の持株会社制度が導入された経緯とその評価について検討する予定である。 また、専門職会社の社員の責任など、専門職会社法制の個別論点に対する理解を深め、その後の研究につなげていきたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
必要文献の入手が遅れたため。 必要文献の入手に充てる予定である。
|