フランスでは、いわゆる専門家について「会社」形態での実施が認められている(以下、「専門職会社」という)。各専門職に共通する制度として「専門職民事会社」および「自由業実施会社」という特別の会社制度が置かれているほか、専門職によっては株式会社その他一般の会社形態を用いることも認められている。本研究は、このように特色あるフランスの専門職会社法制を概観し、わが国にとって重要と思われる課題(社員の責任、異業種連携)を検討することを目的とするものである。 本年度は、過年度に引き続きフランス専門職会社法制一般について検討し、それに並行して個別の問題点を把握・検討することに努めた。当初、専門職会社法制全体について、その形成と発展に関する論文を執筆する予定であったが、自由業実施会社法の改正に関する法律案が昨年提出されたため、本年度は、専門職民事会社に焦点を当てて論文を執筆・提出した。この論文では、専門職民事会社の特徴を示したのち、専門職民事会社法の近時の(2011年)改正内容を紹介している。専門職民事会社の硬直的な制度がいくつかの点において緩和されており、会社形態の選択において専門職民事会社がより魅力的な制度となるような工夫がなされている。 続いて二本目の論文において、フランスにおいて現在、専門家に対してどのような会社形態が認められているかという点を整理することとした。提出予定の大学紀要の刊行日程の関係上、論文の提出時期は本研究期間後となる。この論文では、それぞれの会社形態の特色(会社目的、社員資格、社員の責任、利益分配の有無、一人会社の可否、異業種連携の可否等)、専門職ごと(弁護士、医師、建築士、会計士等)に好まれる形態とその理由を示したいと考えている。なお、自由業実施会社制度の改正動向その他本研究期間において検討が及ばなかった点については、今後の新たな研究課題としたい。
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