本研究の成果は,医療領域における組織過失論を深化させるための手掛かりが得られたことである。医師と医師,医師と他の医療スタッフなどの「協働」が現代医療の特徴であるとすれば,民事責任を論じるにあたってもこれを踏まえる必要がある。これを可能にするのが組織過失である。右概念を通じて、チーム医療の代表者によって実態を踏まえた組織編成が十分になされているか、病院開設者によって基準を遵守した病院全体の組織化が十分に実施されているかを判断することで、協働を取り込んだ責任論が展開できるのである。またこの議論は、「インターフェイス」という観点に着目すれば,転送義務などの従来の議論とも統一的に論じうる。
|