1、フランス相続法における相続債務の扱いに関する研究を継続して行った。(1) 判例及び1976年12月31日の法律による民法典815条の17によって、実質的に遺産の清算がおこなわれていること、このような処理は、遺産が1つの財産体として相続人により管理されているという視点で理解することにより可能になることを明らかにした。この内容は昨年度中におおむねまとめていたが、論文として完成させ、近刊予定となっている。(2) さらに、相続債務の処理に際して生じる相続人間の求償が、わが国では問題となり得るところ、フランスでは最近の判例が815条の17の解釈として処理していることも明らかにした。相続債務の扱いは、法務省内に設置された相続法制検討ワーキングチームでも検討された、現在最も重要な課題の1つである。母法であるフランス相続法の現在の考え方を明らかにした本研究は極めて参考になると思われる。 2、1の成果を踏まえ、わが国の相続法制度のもとで、遺産を清算する可能性について検討を重ねた。また、遺産を清算する可能性を探るためには、相続債務のみならず、それを弁済するための積極財産・他の消極財産を総合的に検討しなければならないため、判例分析等をする際にも、遺産管理に留意しながら検討を重ねた。わが国において遺産の清算を実現するためには、立法的課題があり、相続債務と遺産分割との関連等も検討する必要があることが明らかともなった。残された課題については、今後も研究を継続する。
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