研究課題/領域番号 |
24730077
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
立石 直子 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (00369612)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 離婚法 / ドメスティック・バイオレンス / 夫婦の非対称性 / 離婚後の子の処遇 / オーストラリア家族法 |
研究概要 |
研究実施計画として、平成24年度には、(1)DV事案に関する離婚手続上の課題を検証すること、また、(2)比較法の視点からオーストラリア連邦家族法についての調査研究を予定していた。このうち、(1)については、公表事例の限りであるが、保護命令が発令されている事例など、離婚の背景にDVがある事例について判例分析を行い、同時に、被害者であり離婚を求める立場の一方配偶者にとって、そもそもどのような点に困難があるかについて検討した。(2)については、オーストラリア連邦家族法がDVへの配慮を内容として改正されており(Family Law Legislation Amendment (Family Violence and Other Measures) Act 2011)、この改正内容が2012年6月に施行されたことから、その背景や内容について研究を行った。 平成24年の本研究に関わる実績としては、 ●学会報告:2012年度法社会学会ミニシンポ「法執行から見る DV防止法:異なる法分野における執行の連携と協働の可能性に向けて」(共同報告者:柿本佳美 、宮園久栄、町村泰貴、松村歌子 )2012年5月12日 於京都女子大学 ●雑誌論文:立石直子「ドメスティック・バイオレンス事案への対応」(法律時報58巻4号、小特集「離婚後の面会交流―問題の多様性と望まれる法システム」) ●論文執筆:立石直子「家族生活における人権保障の課題―DV問題にみる夫婦の非対称性と民法二条の可能性を考える」上田勝美・憲法研究所編『平和憲法と人権・民主主義』法律文化社、150-163頁、などの成果を収めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画にしたがって研究を進め、関連する業績を収めることができた。 日本法におけるDVと離婚問題については、計画の内容にとどまらず、離婚後の親子の交流にかかる課題を検討するなかで、DV被害者がDV加害者との間で、交渉能力、訴訟過程において、どのような立場にあるかについて考察を進めることができた。 また、計画していたオーストラリア法の研究については、本研究の課題に関わる法改正があったため、時宜にかなった研究を進めることができた。2006年改正法において離婚後の共同親責任法を定めたオーストラリアにおいて、2011年にDVに配慮する法改正を改めて行った背景に何があったのか、その概要をおさえることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)引き続き、オーストラリアにおける離婚実務において、2011年の改正がどのような影響をもたらしているのか、DV被害者、両親の暴力を経験した子ども、両者の立場から検討したい。平成24年度には、予定外に、比較法研究に長けた研究者らと交流を持つ機会が多く、北欧、アジア諸国の家族法についても、改正動向について知ることができた。オーストラリアだけでなく、DV問題は今や世界共通のテーマであるため、諸外国においては、この問題を離婚法の中でどのように位置づけているのか、また、離婚当事者が「加害者・被害者」の場合に両者の非対称性にどのような配慮があるのか、引き続き研究を進めたい。 2)国内においては、離婚後の親子の面会に関わる紛争など、離婚後の子の監護をめぐる紛争は増加している。離婚後の子の処遇をめぐる紛争が長期化したり激化することは、DV事案においてどのような意味を持つのか、離婚後の手続における当事者の非対称性という問題関心から検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、改正後のオーストラリア家族法が施行後1年を迎えるため、DV事案への配慮に基づく法改正が、法実務においてどのように活かされているのか、現地で関係者へのヒアリングを行いたいと考えている。次年度使用額の約10万円については、このヒアリング調査にかかる費用を補足することに充てたいと考えている。
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