研究課題/領域番号 |
24730077
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
立石 直子 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (00369612)
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キーワード | DV事案における離婚 / 配偶者間暴力 / 子どもと暴力 / ドメスティック・バイオレンス |
研究概要 |
平成25年度は、夫婦の非対称性が顕著なDVを原因とする離婚の諸問題のうち、離婚後の子どもの処遇を中心に研究を進めた。とくに、民法766条の改正後の実務が定着していく昨今において、DV被害者である配偶者を、子どもをめぐる両親間の紛争における相対的弱者として考慮する必要性について考察した。そのほか、研究計画に挙げていたオーストラリア家族法の改正について、現地での資料収集や調査を進めた。これらについての公表物は以下のとおりである。 1)「DV事案における離婚と子の処遇-被害者と子どものために必要とされる視点とは」 、法執行研究会編『法はDV被害者を救えるか―法分野協働と国際比較』pp172-pp191(商事法務、2013)所収、2)「オーストラリアにおけるfamily violence問題への対策と課題」、法執行研究会編『法はDV被害者を救えるか―法分野協働と国際比較』pp454-pp486(商事法務、2013)所収、3)「ドメスティック・バイオレンス事例への対応」法律時報85巻4号「小特集 離婚後の面会交流──問題の多様性と望まれる法システム」59‐61頁(2013年4月)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に沿って、DVを原因とする離婚時の子の処遇について研究を進めることができた。とくに、アメリカ、イギリスの研究者から資料を得たり、オーストラリアにおいてヒアリング、資料収集を行い、これをもとにして離婚時の共同親権、面会の推進が、DV事案でどのような影響を与えるのか、比較法的な視点を取り入れ分析を進めた。 以上のような理由から、概ね順調に進んでいると考えている。 今後の課題としては、研究計画に入れている判例上の分析を進める必要があると考える。離婚時の夫婦間の非対称性は、離婚訴訟において、手続面、判決にどのような影響をもたらすのか、最終年の研究としてすでに取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
【子どもの処遇をめぐって】引き続き、離婚後の子の処遇をめぐる争いにおいて、裁判所の「親としての適格性」の判断に配偶者への「DV加害」がどのような影響を及ぼしているのかを検証したい。素材として、これまで収集してきたオーストラリアをはじめとする、諸外国のファミリー・バイオレンスに関する法制と家族法の資料を踏まえ、日本法における研究につなげていきたいと考えている。必要に応じて、ヨーロッパ諸国の法制に関する調査をしたい。 【判例分析】研究計画の通り、判例分析を進める。離婚訴訟において、裁判所はDVの「暴力加害」をどのように評価しているのか、これについて研究を行う。とくに、ジェンダー法学の観点から批判が高い「青い鳥判決」(平成3年9月20日名古屋地方裁判所岡崎支部判決)以降、DV問題の社会的認知とともに、裁判所の評価にどのような変化があるのか分析したい。また、配偶者への「DV加害」が、離婚給付に与える影響についても検証したい。 【研究協力者へのインタビュー】家裁事案の公表事例には限界があるため、DV関連事案を多く扱う弁護士との研究会、インタビューを通じて、現実を踏まえた離婚法のあり方を模索したいと考える。 【研究成果のまとめ】夫婦の非対称性を踏まえた離婚法のあり方について、手続的な面での配慮や、子どもの処遇をめぐって必要な視点など、これまでの研究を整理してまとめとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
・本課題研究を進めるために必要な関係書籍のうち、洋書の購入が予定よりも少なかった。 ・海外調査にかかる支出が予定よりも少なかった。 ・研究をまとめるにあたり必要な関連洋書の購入、追加で行う予定の調査にかかる費用として、支出を予定している。
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