研究課題/領域番号 |
24730079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 真紀 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60324597)
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キーワード | 取締役 / 注意義務 / 経営悪化時 |
研究概要 |
本年度は,研究計画にしたがい,主にドイツ法の調査に重点を置き,経営悪化時の企業の関係者間の利害調整にかかる法状況の把握を行った。具体的には,文献収集を進める一方で,研究協力者を招いてワークショップを開催し,経営悪化時における会社のファイナンスを素材として,関係者の利害調整メカニズムの在り方について議論を行った。経営悪化に直面した企業の再建においては,金融機関からの借入が困難であることが多いため,(金融機関からの借入よりもリスクの高い)資本市場を通じた資金調達の可能性が開かれていることが重要である。これに関連して,エクイティ型の証券の発行については,条件次第では株主総会による承認を要するものとされているところ,株主総会の開催を回避しうるか否かが,資金調達の成功を左右しうる。企業再建を実現するという目的から,株主の権利が制限されるべきか,という問題が顕在化する。株主総会の開催が問題とならない資金調達においては,取締役が誰の利益のために決定をなすべきが問われる。倒産法制と会社法制の境界領域にかかる議論は,企業再編法制の整備にともない,変化の途上にある。比較法の素材としているドイツ法においては,会社法制と倒産法制が,司法システムも含めて並行状態にあり,具体的な事案の分析を通じて,議論が深化しつつある。資金調達にかかる法規制は我が国とは若干異なるが,解釈論が抱える課題には共通点がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は,ドイツ以外の国々についても調査を行う予定であったが,ドイツにおける議論が予想以上に複雑であることが判明したために,他の国々の法状況の調査に割くべき時間が失われた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,引き続き,ドイツの法状況の把握を進めつつ,同国の理論の状況の整理する。他の諸国の法状況の調査は可能な範囲にとどめる。合わせて,わが国の民法および倒産実体法における議論のうち,とりわけ経営悪化時の企業行動,株主の権利ないし経営者の決定に関わるものに重点と置いて,整理する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた海外調査の実施を先送りし,研究協力者を招聘する予定でいたが,研究協力者の渡航費を負担せずにすんだため,次年度使用額が生じている。 研究協力者と連絡を取りながら,海外調査の時期を検討中である。
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