研究課題/領域番号 |
24730079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 真紀 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60324597)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 会社法 / 取締役の義務 / 取締役の責任 / 経営悪化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、諸外国の法状況の調査を引き続き進めつつ、我が国の企業の取引慣行や内部的な意思決定手続の実際を調査するために、複数の企業実務経験者にヒアリングを行った。企業の実務慣行においては、企業の破綻は、当該企業自身の経営者・従業員にも大きな影響を及ぼす事態ではあるが、取引相手にも不測の経済的な損失その他の負担を生じさせる事態である。中小企業は、大企業の下請けのような継続的な取引関係に依存していることが多く、また、大企業のほうでも、すぐれた財・サービスを提供する中小企業は、会社経営の成功に不可欠の存在でもある。したがって、両者の関係は、たとえ中小企業の側が、大企業のグループ傘下に入っていなくとも、かならずしも利害関係が対立する相手方同士というわけではない。したがって、中小企業の経営破綻をめぐる取引関係は、かならずしも、当該会社と利害関係が対立する取引相手との二当事者関係の集積として説明されるわけではなく、また、時間の経過とともに利害関係も変化し、複雑な様相を呈する。経営者に法的責任を課すことによりその行動原理に影響を与えようとする場合には、このような取引実務に与える影響も考慮しなければならないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、研究代表者の妊娠に伴う体調不良および産前・産後休暇、育児休業取得のために、研究の実施に割ける時間が非常に制約されたため。
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今後の研究の推進方策 |
我が国の理論・判例を整理分析し、昨年度までに集積した外国の法状況を勘案しつつ、我が国の企業実務の特色にいかなる配慮が必要かの考察を進める。引き続き、企業実務の関係者に対するヒアリングを継続し、裁判紛争や法定倒産処理手続にまでいたらない事案における具体的な紛争回避・紛争処理のノウハウを調査し、司法が介入する前後で連続性をもった規範のあり方の提示を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、産前産後休暇および育児休業を取得し、研究を一時中断したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定だった研究の残りを平成28年度に実施するため、それに必要な物品日および諸経費を支出する。また、必要に応じて専門家の招聘等により旅費・謝金を主出する予定である。
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