最終年度にあたる平成27年度は、これまでの研究成果をとりまとめ、日本法への示唆・提言を明らかにするための検討・分析を行った。 前半期は、これまでのドイツ親子関係法の研究成果を中心に、ドイツ親子関係法における法的親子関係の構成原理と衡量基準を明確化する作業を行った(「法律上の親子関係の構成原理(七)」法学論叢178巻6号1頁以下)。 後半期は、これまでのドイツ法・フランス法との比較法的検討から得られた示唆をふまえて、日本法の検討・分析を行った。具体的には、生殖補助医療における法的親子関係の成否について考察するとともに、そこで得られた知見を法的親子関係法一般にフィードバックし、法的親子関係法全般の構成枠組みについてさらなる検討を行った。 その作業の一つとして、法的親子関係における意思の位置づけを明らかにするべく、ドイツ法における第三者提供精子を用いた場合の法的親子関係の成否問題を検討した。さらに、そこから得られた知見をふまえて、日本法における法定親子関係の成否において、親になるという意思がどのような意義を持っているか、あるいはその位置づけにどのような問題点があるかを考察した。こうした考察に基づき日本法の問題点の抽出と今後の課題を示した論稿として、「任意認知者による認知無効」法律時報87巻11号71頁以下を公表した。また、法的親子関係の成否を定める衡量要素の一つと考えられる子の利益・福祉との関係で、法的親子関係の効果論の検討も行った(「婚外子相続分違憲決定に関する一考察」水野紀子編著『相続法の立法的課題』81頁以下)。
|