AがBに対して所有権に基づく土地明渡請求訴訟を提起して請求認容判決が出て確定したとする(第一訴訟)。その後BがCに目的土地を譲渡したことを受け、AがCに対して所有権に基づく土地明渡請求訴訟を提起した場合(第二訴訟)に、第一訴訟の既判力は第二訴訟にどう働くかが問題となる。第一訴訟における確定判決のもつ既判力の内容は、AがBに対して第一訴訟口頭弁論終結時に所有権に基づく目的土地の明渡請求権を有していたことのみであり、第二訴訟で勝訴するためにAが立証しなければならない事実(要証事実)は第二訴訟口頭弁論終結時におけるAの目的土地所有権とCによる目的土地の占有である以上、Cが第二訴訟の要証事実を争うことは第一訴訟の既判力に触れないことになってしまうからである。この問題に対しては、第一訴訟と第二訴訟の訴訟物の同一性を擬制するとする見解、第一訴訟の訴訟物が第二訴訟の訴訟物の前提関係に立つと擬制するとの見解が主張されている他、この問題を第一訴訟の既判力で解決するのは不可能であるとする見解が主張されている。 本研究による検討の結果として、そもそも、第一訴訟の既判力が第二訴訟に作用する根拠は、CがBの口頭弁論終結後の承継人であることによるところ、口頭弁論終結後の承継人への不利な既判力の拡張は、前主が承継人へ係争物を譲渡とうすることによる既判力の潜脱の回避にある以上、かかる潜脱行為がなかったと仮定して考察するのが妥当であり、かかる観点からは、第一訴訟と第二訴訟の訴訟物の同一性を擬制するとする見解が最も妥当であるとの結論を得た。しかし、同時に、第一訴訟と第二訴訟の訴訟物の同一性を擬制したとしても その場合、第二訴訟における訴訟物はAのBに対する目的土地所有権、要証事実は口頭弁論終結時のAの目的土地所有権とB占有となり、結局既判力の作用が空振りに終わってしまうという問題が残るとの知見を得た。
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