平成24年度は、研究実施計画に基づき、総論的考察である夫婦の財産関係を規律する原理について、ドイツにおける議論状況を参考に検討を行った。これらの成果は、今後の研究を実施する上での基礎的な作業として位置づけられるものである。 特に、欧州連合(EU)における人的・物的交流が盛んになる中で、ヨーロッパ全体において夫婦の財産関係をどのように規律するのかといった議論が提起され、ドイツ国内法の議論も、ヨーロッパの議論状況に大きく影響を受けている。ヨーロッパ家族法委員会(CEFL)がこれらの議論の中心となり、これまでも他の家族法分野で、一定の成果を報告している。今年度の研究成果には、夫婦の財産関係に関するCEFLの議論を紹介し、大きな議論展開がみられる現状を紹介している。このような総論的考察は、これまで日本では十分ではなかったことから、意義のあるものとして評価することができる。 このようなヨーロッパ全体の議論状況の中で、ドイツの法制度に対する評価は変化しているのか、改正すべき点はどこにあるのか、議論されている。特に第67回ドイツ法曹大会は、夫婦の財産関係に関する議論を行っている。ここでも、ヨーロッパの議論展開が大きく影響している。今年度は、ドイツ法曹大会の議論状況を紹介している。 これらの研究成果は、現在改正の必要性が指摘されている日本の家族法に改正の示唆を与え、議論を進展させることのできるものである。
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