研究概要 |
本研究は、仮に再建型倒産手続を一本化した場合に、あるべき担保権の処遇というグランドデザインの構築を目的としている。その背景には、a)近時の民事再生手続と会社更生手続の近接とb)民事再生手続と会社更生手 続における担保権の取扱いの諸問題がある。後者は具体的に,b-1)会社更生手続における担保権の保護の不十分さ,b-2)民事再生手続における別除権構成の問題点およびb-3)担保権消滅許可制度における目的物の価額の評価基準見直しの必要性が挙げられる。また、評価、実行中止、担保権消滅許可の各局面において一貫して保護されるべき担保権の価値とこれが害された場合の保護・補償のあり方という各論を提示する。仮に一本化が適切ではなく現行の二つの手続の並存が望ましいという帰結に至った場合でも,担保権の取扱いの見直しが必要な点を明らかにし、解釈論ないし立法論を展開する。 以上の視点に基づき、平成24年度は、日本民事訴訟法学会において、b-3)の点に関し、アメリカにおいて、1978年に連邦倒産法が改正される以前に存在した1938年のチャンドラー法において,会社更生手続に類似した第X章手続と民事再生手続に類似した第XI章手続が並存していたところ、1978年連邦倒産法に改正された際に、再建型倒産手続はChapter 11に統合される過程で、担保権の実行を中止する必要性が高まり、かかる制度を置いていなかった第XI章手続においても、裁判所の運用によって担保権実行中止命令が発令されるようになった経緯に着目した。とくに、わが国において、集合債権譲渡担保・集合動産譲渡担保、さらにABLが活発に利用され、担保権実行中止命令発令の必要性と発令された場合の担保権の補償や保護の必要性のバランスを図るという問題意識から、整理、検討をし、日本法への示唆を得た。
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