研究課題
平成25年度では、本研究の主たる目的である、役務提供契約一般に適用される法理(一般法理)の現代的機能を明らかにするために、役務提供契約に関する法状況のさらなる展開について検討することに努めた。具体的には、かねてより翻訳作業を進めてきた共通参照枠草案(DCFR)がようやく公刊されることとなった。これは、ヨーロッパ私法における統一法典としてのモデル提示がなされたものであり、これに対する法学界からの評価は様々ではあるものの、わが国において40名の研究者とともにこのような形で翻訳作業が行われたことは大いに意義のあるものであるといえるだろう。このうち、役務提供契約に関する部分(第IV編c部「役務提供契約」)を担当した(業績図書①)。わが国では現在、債権法改正が議論されており、あいにく役務提供契約に関する総則規定というアプローチが採用される可能性は低いものの、共通参照枠草案にみられるような総則規定を置くアプローチは決して軽視されるべきものではなく、今後も議論の展開も含めて注目に値すると思われる。また、昨年度、検討対象の一つとして研究計画に挙げている契約結合に関する論稿(「消費者紛争の個別類型と消費者法⑥複合契約と消費者」)を公表した(同論文は加筆修正を経て業績図書②に収録された)が、これを基礎としてドイツ語で執筆したものをドイツの雑誌に公表した(業績雑誌論文①)。これは、日本の法状況について、やや細かい議論ではあるものの理論的な部分も含めて海外に情報発信する必要があると、昨年9月頃までドイツのマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所の客員研究員として在外研究を続けていた際に強く感じたことに端を発する。また、2014年3月においても再び同研究所を訪れ、海外研究者と積極的なコンタクトを通じて最新の情報収集に努めてきた。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要でも示したように、共通参照枠草案の翻訳およびドイツの雑誌への論文投稿を試みるなど、研究成果を逐次公表しており、順調に推移している。
今年度も主に書籍購入を中心に充てる予定ではあるが、既に購入し研究遂行に使用していたPC等関連機器のアップデートも必要なため、それらの機器および消耗品等の購入に充てる予定である。その他にも、資料調査等を目的としてドイツ・マックスプランク外国私法及び国際私法研究所等への海外出張も予定している。
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Zeitschrift fuer Japanisches Recht
巻: Nr. 35, 18. Jahrgang (2013) ページ: 171-187