平成26年度は、役務提供契約一般に適用される法理(一般法理)を検討する最終年度として、その全体像をまとめることを目的として検討を開始したところ、平成26年度の研究成果として「研究発表[雑誌論文]」に記載しているとおり、その主たる研究対象となったのは、ドイツにおけるEU消費者権利指令の国内法化の動きであった。EU消費者権利指令は、訪問販売取引および通信取引に関する規定の完全平準化を新たにEU加盟国に課すことを内容とするものであったが、その国内法化の動きは、昨年度はとくに重要なトピックとしてドイツで注目されていた。そして、取引対象が物の売買のみならず、役務の提供も含まれていたことから、本研究の役務提供契約の一般法理とも関連性を有するものであったことから、いち早くそのテーマに着目したのである。 もちろん、役務提供契約の一般法理の現代的機能を探るという意味では、当初考えていた方向性とは、ややはずれることになったことは否めない。しかし、そうした展開に着目し、研究の軸足をそちらにやや傾けざるを得なかったのは、わが国で役務提供契約が問題となる場面、とりわけ顧客の保護という視点から見た場合には、消費者問題を生じさせている事件との関わりを強く意識せざるを得なかったためでもある。 以上のような平成26年度の研究を通じて、本研究の主題とした役務提供契約の一般法理の現代的意義であるが、今後は、消費者契約に関わる問題についても検討対象に加えることで、その法理についてより精確な分析を加えることができるのではないかと思われる。本研究の枠内では対応することができなかった課題となったので、この点についての研究を今後も継続していくように努めたい。
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