本研究は、親権者の財産管理権が共同で行使されることの意味を明らかにすることを目的とするものであった。これは、近時の再構成家族の増加を背景としている。再構成家族においては、いわゆる継親等の父母以外の第三者によって、子の監護は、事実としておこなわれている。このとき、事実として監護をおこなう第三者に対して、親権の行使を認めるべきかどうかが問われるべきところ、この点については、これまでの研究において、フランス法を参照しつつ、親権は第三者にも委譲する理論的可能性があることを示した。 同研究に関連して、次に、親権の内容の一つとされる財産管理権が、再構成家族の中でどのように行使されるべきなのかということが問題となりうる。財産管理権が父母によってしか行使できない性質のものであるとすれば、親権が第三者に委譲されるというときであっても、財産管理権についてはそれが許されないということになる。 本研究では、この財産管理権の性質を明らかにする序論的考察として、上記の研究目的に従い検討をおこなった。その結果、親権委譲制度には、父母の意思に基づいて委譲される任意委譲と、父母の意思によらずに委譲される強制委譲とがあるところ、財産管理権は、原則として父母によってのみ行使されるものであること、ただし、強制委譲の場合には父母の不適切性を理由に財産管理権をも委譲の対象とすべきと考えられていることを明らかにした。また、委譲者たる父母と被委譲者たる第三者との親権の共同行使を可能とする「分担委譲」の可否を決するにあたっては、委譲者と被委譲者と子が共同生活関係にあることが考慮される傾向にあるが、財産管理権に関しては、共同生活関係があることを根拠としてこれを認めるという発想は乏しいことがわかった。
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