研究課題/領域番号 |
24730098
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
花松 泰倫 北海道大学, スラブ研究センター, 学術研究員 (50533197)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ラムサール条約 / アムールオホーツク / 湿地 / 陸海統合管理 / 中国 / ロシア |
研究概要 |
平成24年度においては、ラムサール条約の適用範囲およびその射程について理論的検討を行うべく、資料、図書および二次文献を中心に収集し、分析をおこなった。 第1に、ラムサール条約の実施過程における資料、具体的には、ラムサール条約締約国会議等における公式文書の中から、条約の適用範囲の議論に関連すると思われる部分を抽出し、部分的ではあるが分析検討を行った。その結果、沿岸地域に比較的近い湿地の保全のケースでは、近接する沿岸の海洋環境との関連性が、少なくとも部分的には認識されている場合があることがわかった。 第2に、ラムサール条約のような内陸環境の保全レジームとは別に、地域海洋レジームなどの海洋環境保護の条約の側から、内陸の環境保全との関連性がどのように認識されているかという点についても検討を行った。具体的にはバルト海の海洋環境保護レジーム(ヘルシンキ条約)の条約実施過程における文書を収集し、分析を行った。その結果、海洋環境レジームの側においても、比較的沿岸域に近い場所に存在する湿地の保全については、湿地と海洋環境との生態的関連性がある程度認識されていることがわかった。 第3に、複数の条約間の関係性およびリンケージについて、国際法や国際関係論の一般理論における最新の理論状況を調査分析することによって、検討を行った。これは、ラムサール条約の射程範囲と海洋環境保護に関する条約の射程範囲が部分的に重なった場合、どのような処理がなされるべきかを検討する際に重要となる、予備的作業である。 また、以上の検討を部分的に取り入れた形で、査読付き論文二編、および査読なし論文一編をまとめ、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度においては、ラムサール条約の適用範囲およびその射程に関する理論的検討については概ね順調に進展させることができた。関連する資料および文献の収集は予定通り進展しており、資料の読み込みとそれに基づいた分析も着実に行っている。 他方、平成25年度に予定している調査及びヒアリングの打ち合わせのために、総合地球環境研究所(京都)に加えてロシアおよび中国の両国を訪問する計画であったが、その部分は達成できなかった。ただ、ロシアについては、幸いにも別の研究資金によってハバロフスクを訪問する機会を得、関係する研究者から、ロシアの湿地保全状況を調査する際の資料収集方法、および訪問すべき研究協力者の紹介を受けることができた。中国については、近時の日中関係の悪化が大きく影響し、中国東北部において湿地保全に関与する研究者へのコンタクトが大変困難となった。しかし、年度末において、研究協力者である、ダ(中国簡体字のため省略)志剛氏(中国黒龍江省社会科学院東北アジア研究所副所長) から、関係する研究者の紹介を受けることができたため、25年度においては予定通り中国への調査を行うことが可能になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成25年度においては、前年度に行ったラムサール条約の適用範囲およびその射程についての理論的検討をさらに継続して行うとともに、国際会議での研究発表、およびロシアおよび中国の関係者と関係機関を訪問して、実際の湿地保全政策の実施状況について実地調査およびヒアリングを行う予定である。 具体的には、6月にイルクーツクで行われるロシア極東の水資源に関する国際会議、および10月にウラジオストクで行われる『アムール・オホーツク・コンソーシアム』第三回会合において研究報告を行うとともに、会議参加者と積極的にコンタクトをとって湿地保全に関与する研究者へのインタビューを行う予定である。また、25年度後半においては、研究協力者であるユルゲン・シモノフ氏を訪問し、ロシア、中国およびモンゴルの三カ国共同湿地管理が行われているダリア国際保護区のフィールド調査を行う予定である。さらに、中国については、前述のようにダ志剛氏から紹介、協力を得る形で、中国東北部のアムール川流域において湿地保全政策を研究する研究者を訪問し、中国における湿地保全政策の実施状況について知見を得たいと考えている。 以上のような理論的検討および実地調査ならびに関係者へのインタビューの結果をまとめ、学会誌への投稿を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述のように、平成24年度においてはロシアおよび中国への海外調査を行うことができなかったため、その不備を補うために国内の研究者から協力を仰ぐべく、計画よりも多く国内出張を行った。その際、出張回数の増加に伴う出費の増加を勘案して旅費を節減した結果、少額ながら使用残額が生じた。この残額は、平成25年度において実施を計画しているロシアおよび中国への海外調査にかかる外国旅費、または資料および文献の収集をさらに充実させるべく増額を予定している図書及び資料の購入のために使用する。
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