研究課題/領域番号 |
24730098
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
花松 泰倫 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 講師 (50533197)
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キーワード | ラムサール条約 / 統合的管理 / アムールオホーツク / 湿地 / 国際河川 |
研究概要 |
第1に、平成25年度においては、昨年度に引き続き、ラムサール条約の適用範囲、およびその射程についての理論的検討のため、資料、図書、また二次文献を中心に収集し、分析をおこなった。特に、ラムサール条約の実施過程に関する締約国会議や科学技術検討委員会(STRP)の公式文書を包括的に収集し、当条約が湿地帯以外の部分にまで適用されるか否かという点に関連する部分に焦点を当てて検討を行った。その結果、沿岸域に近い形で存在する湿地の保全については、海洋環境保護との連続性が認められ、当条約の適用範囲が海洋まで含まれるのではないかという結論を得た。 第2に、上記の点につき、国内外の研究者と意見交換を行い、ラムサール条約の適用範囲に関する様々な知見を得た。具体的には、5月および10月に行われた国際法学会に参加した際に、環境法を研究する研究者と議論を行ったほか、6月にロシア・イルクーツクで行われたシベリア極東水会議にて研究発表を行い、環境法のみならずロシア極東地域の河川や湿地に関して研究する自然科学研究者、実務家などと協議を行った。特に後者においては、UNECE越境水路保護に関するヘルシンキ条約の2013年発効の改正によって、当条約がアムール・オホーツク地域の国際河川および湿地にも適用可能となり、さらに適用範囲を拡大することを狙いとしていることから、ラムサール条約だけでなく、国際河川に関する条約にもとづいて湿地と海洋の統合的管理を図る可能性について、大きな示唆を得ることができた。 また、以上の検討を部分的に取り入れた形で、査読なし論文二編をまとめ、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度においても、ラムサール条約の適用範囲、およびその射程に関する理論的検討については概ね順調に進展させることができた。ラムサール条約に関する締約国会議や科学技術検討委員会(STRP)の資料等の収集、分析については、予定通り進展している。 また、国内外の研究者および関係者へのインタビューによって、ラムサール条約の効果的な適用が実際にアムールオホーツク地域で可能かどうかに関する検討を行う作業を行った。国内の環境法の研究者に対しては、国際法学会への参加の機会を利用する形で議論を行ったほか、ロシア・イルクーツクで開催されたシベリア極東水会議に出席し、ロシア極東や北東アジア地域の水の専門家と意見交換を行った。さらに、アムールオホーツク生態系の保護に関する日本、中国、ロシア、モンゴルの4ヶ国の研究者および実務家が参加した『アムール・オホーツク・コンソーシアム』第三回会合が10月にウラジオストクで行われ、別の研究資金によって研究発表を行い、意見交換を行った。 他方、年度後半に中国の湿地管理に関する研究者を訪問し、中国国内におけるラムサール条約の実施状況、またその他の湿地管理プログラムを実地調査し、聞き取り調査を行う予定であったが、昨今の日中関係の悪化により、当初予定していた中国のカウンターパートへの訪問が実現できなかった。そのため、当初は平成25年度にて当該研究事業を終了する予定であったが、1年間の事業期間の延長を行う運びとなった。
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今後の研究の推進方策 |
事業期間の延長に伴って最終年度となる平成26年度においては、まず前年度に実現できなかった中国の湿地管理の研究者および実務家への訪問を行い、中国国内におけるラムサール条約の実施状況、またその他の湿地管理プログラムを実地調査し、聞き取り調査を行う予定である。具体的には、ダ(中国簡体字のため省略)志剛氏(中国黒龍江省社会科学院東北アジア研究所副所長)、または閻百央氏(中国科学アカデミー東北地理農業生態学研究所)などを訪ねることを計画している。 さらに、前年度に引き続き、ラムサール条約の適用範囲に関する理論的検討についても、引き続き行っていく予定である。 以上のような理論的検討、実地調査ならびに関係者へのインタビューの結果をまとめ、学会誌への投稿を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度後半に中国の湿地管理に関する研究者を訪問し、中国国内におけるラムサール条約の実施状況、またその他の湿地管理プログラムを実地調査し、聞き取り調査を行う予定であったが、昨今の日中関係の悪化により、当初予定していた中国のカウンターパートへの訪問が実現できなかった。そのため、中国への海外調査にかかる旅費、およびそれを前提として昨年度末に投稿予定であった学術論文の翻訳料などを使用することができず、残額が生じた。当初は平成25年度にて当該研究事業を終了する予定であったが、1年間の事業期間の延長を行い、平成26年度に残された研究事業を行うこととした。 前年度に実現できなかった中国の湿地管理の研究者および実務家への訪問を行い、中国国内におけるラムサール条約の実施状況、またその他の湿地管理プログラムを実地調査し、聞き取り調査を行う予定である。具体的には、ダ(中国簡体字のため省略)志剛氏(中国黒龍江省社会科学院東北アジア研究所副所長)、または閻百央氏(中国科学アカデミー東北地理農業生態学研究所)などを訪ねることを計画しており、今回生じた使用残額については、第一に中国への外国旅費に充てることを考えている。また、本来ならば昨年度末に投稿予定であった学術論文の翻訳料などにもこの残額を使用する予定であるほか、理論的検討に必要な資料および文献の収集をさらに充実させるため、図書及び資料の購入のために使用する。
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