本研究の目的は、非医療者による医療行為をどこまで許容するかの法的な問題の整理を行うことにより、医療を必要とする人やその家族への支援を行い、多職種が連携することで、よりよい医療体制を構築することである。医師法17条の「医師でなければ医業をしてはならない」との規定は、医療の専門性を維持し、安全な医療を提供するためのものである。しかしながら、実際に医療を必要とする人がいる場面で、必ずしも医療専門家がいるわけではない。例えば、在宅医療や学校などの教育機関などでは、非医療者によるサポートを部分的に許容する体制ができつつある。しかし、これらはあくまでも例外であり、本来は非医療者による医療行為は許されないとされる。それにより、医療を必要とする人へのサポートが十分行き届かない、あるいは家族への負担が増えている状況もある。 特に、東日本大震災では、交通の分断や医療専門家の不在により、多くの非医療者による医療行為のサポートが必要とされる状況が生まれた。そして、厚生労働省の通知により、医師法17条の例外として救急隊員らの気管挿管を認めるなどの対応がなされた。しかしこれはあくまでも震災での例外的措置であり、本来であれば医師法違反との解釈が通常である。しかしながら、今後首都直下地震や東南海地震などの大規模災害も予測される中で、このような例外的かつ現場負担に頼った方法でよいのかという疑問もある。むしろ、法的な免責制度を置くことや、震災などの緊急時には通知を行わなくともこのような緊急避難的な対応が認められることを明示することも考えられないではない。本研究の最終年度として、将来の日本を見据えた対応をすべきと考える。
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