当該年度においては、日米両国における環境規制と財産権の衝突をめぐる議論の手法、考慮事項、理論状況が法体系の性質からも大いに異なることを前提としたうえで、アメリカ環境規制における収用補償理論に焦点をあて、収用補償理論の展開について、2010年、2013年に出された二種類の連邦最高裁判所判例に着目した論文を「アメリカ環境規制に伴う収用補償理論の展開」静岡大学法政研究第19巻2号(2015年2月発行)において、上梓した。そのなかで、公共信託理論の解釈法理としての限定的な適用と、法理念としての拡張的な適用をめぐる二つの側面について分析した。また、規制の実施と私的財産権の調整にあたって、実質的に必要とされる要件について、整理を試みた。また、当該年度においては、合衆国判例研究会、早稲田大学アメリカ法判例研究会にて、判例報告を行い、市民生活と法研究会(於、福岡大学)にて、「アメリカ環境法における損害論」に関する研究報告を行った。 なお、昨年度までに、試行的に実施したデータ-ベースについては、運用に関するノウハウを蓄積した。実用に向けては、本格的なwikiに関する利用の導入研修と、運用に携わる人員の配置、継続的な運用を支える事務局の整備が必要なことが明らかとなった。今後も引き続き、実用に耐えうる運用の開始を目指して、コンテンツの蓄積、システムの保守ならびに運用を支えるネットワークの拡大に努めたい。 さらに、本年度においては、サンフランシスコにおいて、複数の専門家の方々にカリフォルニア州での沿岸部の規制などについて、現地調査およびヒアリングを行い、研究への有益な示唆をいただいた。
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