研究課題/領域番号 |
24730104
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村上 画里 大阪大学, 知的財産センター, 特任講師(常勤) (70597351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 共有 / 委任 / 内部分裂 |
研究概要 |
団体の内部紛争と知的財産法に関する裁判例を分析して類型化を行った。この分析により、類型化した問題点のうち、今年度は、著作権法に関する論点について研究を進めた。具体的には、(1)共有著作権をめぐる著作者の相続人間の紛争について、(2)著作者死後の著作権管理に関する問題について検討を行った。 (1)共有著作権をめぐる著作者の相続人間の紛争 共有著作権に関する権利行使に関する最新の裁判例(大阪地判平成23年11月24日(平成21年(ワ)20132号))について判例研究を行い、論文を執筆した。その研究成果を拙稿「著作権法65条3項にいう『正当な理由』ーYG性格検査事件ー」として知財管理63巻1号91頁に公表した。また、この研究成果について、東北学院大学企業法務研究会で報告を行い、弁護士や研究者と議論を行った。 (2)著作者死後の著作権管理に関する問題 共同著作物の著作者死後の著作権管理について、民法の委任契約や遺言法を参照しながら、問題点を抽出し、日本私法学会において民法学者らと意見交換を行った。意見交換等で得た情報について整理を行い、論文を執筆した。その成果は、拙稿「著作者死後の著作権管理」阪大法学62巻5号289頁で公表した。 (1)においては、共有著作権に関しては、権利行使を拒絶する正当理由について、最近の裁判例は経済的要素を考慮しつつあることが明らかとなった。(2)では、共有著作権行使に関する著作権法のデフォルトルールを排除するために、著作者は死後の著作権管理について有用であるとされている見解の妥当性について検討を行った結果、委任契約によって、著作者死後の著作権管理に関する紛争の事前解決をすることは必ずしもできないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、予定どおり調査を行い、研究成果として今年度は論文2本を公表することができた。 また、他大学における研究会で研究成果について報告し、意見交換・議論を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、内部分裂に関する商標法及び不正競争防止法上の問題について外国法との比較研究を行う予定している。具体的には、アメリカ法を比較対象とし、商標権をめぐる内部紛争を中心として研究を進めていきたいと考えている。 今年度は、国内外の著作権法・商標法・不正競争防止法の各分野の調査・分析に研究をとどめる予定であったが、本研究に関連する著作権法分野の論文公表の機会を得られたため、国内法のうち、従来行ってきた著作権法に関する研究を深化させる方向で研究を実施した。次年度は今年度行っていなかったアメリカ法との比較研究も行うことにする。特に、商標権をめぐる紛争に関して研究を進めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、内部分裂に関する商標法及び不正競争防止法の分析及び外国法との比較研究を行う。研究費は、情報交換・情報収集のための旅費、書籍の購入費に当てる予定である。
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