今年度は、商標法領域に関する内部分裂事例について調査を行い、外国法と比較を行いながら論文の執筆を行った。執筆にあたっては、アメリカにおいて重要とされるファクター等と日本において裁判例等が示すファクターの関係を意識しながら需要者の視点についてどのように扱われているのか考察した。具体的には、「知的財産に関する内部紛争事例の類型化」した場合に、各類型で導かれる結論の妥当性について検討し、それに対する私見を村上画里「内部分裂後の商標の使用」阪大法学63巻5号(2014)103-127頁で公表した。また、人の氏名をめぐる芸能事務所等と芸能人間の内部分裂事例について、村上画里「芸能人の氏名・芸名を巡る紛争における当事者の攻防」知財ぷりずむ136号(2014)44-56頁で公表した。 今後、商標法の保護対象として音等の著作権と抵触関係を生ずる商標保護される方向で法改正される見込みがでている。商標権者と著作権者が内部分裂等の事情により同じ物を対象とする権利は両権利の調整をどうすべきかという点について問題となりうる。もっとも、内部分裂を原因とする商標権と著作権の抵触関係に関するこ裁判例は現在のところ見当たらないが、今後の基礎的な研究として著作権と商標権の抵触関係に関して、外国法と比較しながら、 村上画里「著作権と商標権の権利調整―日本法と台湾法の比較」知財ぷりずむ134号(2013年)30-39頁、同「著作権と商標権が併存する場合の調整のあり方について」阪大法学64巻1号(2014年5月刊行予定)に公表した。
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