研究課題/領域番号 |
24730110
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
大木 直子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, リサーチフェロー (80612572)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 政治参加 / 女性 / ジェンダー / 地方政治 / 選挙 |
研究概要 |
本研究は、女性の進出が最も困難とされる都道府県議会を取り上げ、同議会の選挙制度(特に選挙区定数のばらつき)が女性の政治参加にどのように影響しているのかについて考察するものである。 平成24(2012)年度は2つの調査を実施した。まず、都道府県議会議員選挙の選挙区(市区町村)ごとの女性の政治参加の実態を調査し、定数の増減と女性の立候補ならびに当選の状況を考察した。国際比較調査では、「定数(当選者の数)の規模が大きいほど女性の政治参加には有利である」と指摘されている。また、日本の都道府県議会について調査した研究によると、人口が集中する地域や、候補者を擁立する政党・党派の数が多い地域の議会へより多くの女性が進出していると指摘されている。本研究は、「1つの選挙区定数が多いほど、女性の進出も増える」との仮説を立て、収拾したデータを分析した。 その結果、①定数が多ければ多いほど、女性の当選率も上昇すること、②定数が5以上という大規模な選挙区の場合、候補者に占める女性割合はほとんど増えないこと、③政令指定都市と東京23区ではその他の自治体と比べて全候補者に占める女性割合が高いものの、当選率はより低いことを確認した。これらの知見については学会、研究会等で報告した。 2つ目の調査は、インタビュー調査である。首都圏の女性地方議員(元職も含む)を対象に、都道府県議会議会議員選挙で、(1)女性候補者はどの規模の選挙区で立候補し、当選しているのか。(2)都道府県でどのような違いがあるのか、について聞き取りを行った。H24(2012)年3月31日時点で、6名の協力者から、個々の立候補や選挙活動、議会活動についての詳細な情報と、都道府県議会への進出のしにくさやその原因などについて聞き取りを行った。現在、データ整理を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、2000年以降の都道府県議会議員選挙のデータを包括的に収集し、全部で約4,000の選挙区の女性進出データを抽出することができた点である。研究代表者は、官公庁HPや民間の調査機関の電子データベース、全国紙、選挙管理委員会発行の資料などの様々な形態の資料を収集し、エクセルファイルにて保管した。専門的な計算ソフトを用いた詳しい分析までには至らなかったが、選挙区別の定数と女性議員の相関関係を調べた本研究のデータは、それ自体が重要なデータとなっており、2年目の研究計画の遂行に向け、貴重な材料として活用されうるデータとなっている。 第二に、本格的なインタビュー調査に向けた予備調査を十分に進められた点である。調査対象の自治体は、首都圏内の1自治体(女性の議会進出について本研究が類型化した4つのパターンから言えば、女性の進出が非常に高い自治体)に留まるが、平成24(2012)年3月31日時点ですでに6名への聞き取りを実施した。さらに、同時点で5名の調査協力者とのアポイントメントを取ることができている。すでに実施した聞き取りのデータは、2年目の本格的なインタビュー調査の土台となる資料となっており、本研究全体の遂行に寄与するものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
都道府県議会議員選挙の全国データについては、女性地方議員が増加し始めた1980年代後半から1999年までのデータを収集・整理し、「55年体制」の崩壊(1990年代半ば)前後のデータについて比較、検討を行う予定である。ただし、計量分析については、調査対象の選挙年を変更したり、変数を調整したりする可能性がある。 女性候補者の配置に関するインタビュー調査については、予備調査を踏まえて、本格的な聞き取り調査を実施する。ただし、調査対象地については、当初の4自治体から変更する予定である。時間的制約とプライバシー保護の徹底により、データ整理に大幅な時間を要すること、調査対象地が分散することにより、時間的、内容的に聞き取り調査が不十分となる可能性が予想されることの理由から、調査対象の都道府県を絞り込み、その中の基礎自治体を複数取り上げることで、より詳細な聞き取り調査を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね当初の予定通りに研究費を使用する予定である。 設備備品費については、主に、日本語・英語の書籍(選挙制度、女性の政治的代表性に関するもの)の購入に用いる。消耗品費については、プリンタートナーやコピー用紙、文房具等の購入に用いる。国内旅費については、当初予定していなかった学会にも参加予定だが、大幅に予算枠を上回ることはない。 外国旅費については、当初予定していたアメリカ出張ではなく、ヨーロッパ出張またはアジア諸国への出張に変更する可能性があるが、渡航期間や航空会社の選択を考慮することで当初の予算枠内に収まる予定である。 人件費・謝金、その他の予算枠については、当初の予定通りインタビューデータの書き起こし、各種学会の年会費、参加費等に使用する。 なお、都道府県議会議員選挙の大量データについては、統計ソフトに関する高度な操作技術が必要とされるため、専門的な知識の提供を求める場合が予想される。この場合は、人件費・謝金の予算枠を大幅に変更することのないよう注意しながら、研究費を使用する。
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