本研究は、女性の進出度が最も低い都道府県議会を取り上げ、同議会の選挙制度(特に、選挙区定数の偏り)が女性の議会進出にどのように影響しているかについて、量的・質的調査を通じて考察するものである。H24年度は、同議会の2002年から2012年までの選挙区定数ごとの女性の政治参加の実態を調査し、定数の増減と女性の立候補、当選の状況を考察し、①定数が大きければ大きいほど、女性の当選率は上昇傾向にあること、②選挙区定数が5以上の場合、全候補者に占める女性割合はほとんど変化がないこと、③政令指定都市と東京23区ではその他の自治体と比べて全候補者に占める女性割合が高いものの、当選率はより低いこと、を明らかにした。調査最終年のH25年度は、主に、女性候補者リクルートメントに関する聞き取り調査を実施した。インタビュー調査では、計13人の地方議員や政党地方組織の幹部(H24年度の6名を加えると2年間で計19名)に対して県議会への進出の困難性、市町村議会議員選挙との違いなどについて聞き取りを行った。その結果、④都道府県議選への立候補には所属政党の有無や選挙区内の候補者選考過程におけるジェンダー・バイアスが影響すること、⑤2000年以降女性の議会進出のパターンがそれ以前と大きく異なっていることを確認した。研究開始当初、インタビュー調査については、他府県への出張を予定していたが、国政選挙や東京都都議選が連続したことから政党関係者との調整が困難となり、野党再編に伴う女性議員の所属党派の変更を追跡する必要もあったため、研究代表者・大木がこれまでフィールド調査を続けてきた神奈川県を主な対象地として進めた。対象地を集中させたことにより、神奈川県議会のすべての党派の女性議員に聞き取りすることが可能となった。これらの膨大なデータについては調査終了後の論文投稿にも使用する予定である。
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