最終年度にあたる今年度は、前年度までの現地調査の成果をもとに、クウェートでは、独立の汚職対策機関の設置をめぐって、議会での審議には時間を要したものの、議員が政府を押し切って会計検査院と同等の独立性を付与することに成功した政治過程についてまとめ、権威主義体制におけるアカウンタビリティという分析枠組みの中で、日本政治学会にて「レンティア国家における政治参加はガバナンスの向上をもたらすか:中東湾岸諸国における腐敗防止と議会・司法の役割」という題目で報告を行った。 研究期間全体通じた成果としては、権威主義体制下であっても、議会における野党勢力の要求を通じて、汚職対策政策を中心に、政府の対応としてのガバナンス向上の取り組みを引き出していることが確認された。ただし、政府の対応の程度は、野党がどれだけ政府の政策に拒否権を持ちうるか、制度的な要因に制約される点、政治の司法化によって、司法の独立性にも左右されている点について留意する必要があり、今後の課題としたい。
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