2014年度の研究実績は次の二点に集約される。 第一に、同盟政治における「巻き込まれるリスク」と「見捨てられるリスク」が有権者の積極的防衛政策への支持に与える影響の検証。日本の有権者は2014年7月1日に行われた集団的自衛権行使容認の閣議決定をめぐって意見が割れていたが、その中でそれを支持する立場からは集団的自衛権行使容認がなされなければ有事の際、アメリカを含む国際社会が助けてくれないなどと「見捨てられるリスク」が強調されていた一方、それに反対する側からは集団的自衛権行使容認によってアメリカの戦争に巻き込まれてしまうなどと「巻き込まれるリスク」が強調されていた。しかしこうしたリスクが実際に有権者の態度に影響を与えているのかはこれまで検証されてこなかった。そこで本研究ではこれらのリスクの影響を検証するべく、集団的自衛権行使容認の閣議決定の3週間後にサーベイ実験を行った。その結果、「見捨てられるリスク」の情報刺激を受けた有権者は閣議決定に反対する割合が有意に低かった一方で、「巻き込まれるリスク」の情報刺激を受けた有権者は反対する割合に大きな違いは出なかった。 第二に、2014年衆院選における都市化と所得の交互作用による、自民・共産という対極の両党の躍進の説明。2014年衆院選において両党が票を伸ばしたのは、投票率が下がったため組織票の影響力が増えたからだとの説があるが、分析の結果そのようなエビデンスは見つからなかった。その一方、集計レベルデータ分析から、都市部ほど前回衆院選に比べて共産党が票を増やし、非都市部ほど前回に比べて自民党が票を伸ばしたことが明らかになった。また、個人レベルデータ分析から、都市部においては低所得者層ほど共産党に、高所得者層ほど自民党に投票するという傾向が見られたが、非都市部においてはそのような傾向が見られなかった。
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