最終年度に実施した研究の成果及び研究期間全体を通じて実施した研究の成果は下記の通りである。 第一に、本研究では、公共政策をめぐるステイクホルダー(利害関係者)間の対立と調整について4つの事例を調査しモデル化を行った。その結果、①対立が先鋭化し調整が必要とされる事例(八ッ場ダム事業、諫早干拓事業)、②対立が先鋭化し、自治体が調整役を担った事例(川辺川ダム事業)、③長期的な対立において大学の機関が調整役を担った事例(サクラメント水事業)、以上3つのモデル化が事実に裏付けられていることを資料解釈および面接調査によって明らかにした。 第二に、本研究においてヒアリング調査を実施したカリフォルニア州立大学サクラメント協働センター(Center for Collaborative Policy、以下CCP)は、公的機関、利害関係者、そして一般の人たちの能力を高め、協働的な策略を用いて、政策の結果を向上させ、多くの協働事業を導いた抱負な実績を有していた。それらの実践は、相違や対立を超える協働型決定(collaborative decision-making)として理論化されており、日本における合意形成研究において重要な知見を提起している。 第三に、日米における事例研究によって、公共政策をめぐってステイクホルダー間の対立が先鋭化した後、調整されるか否かは、調整者の有無に依拠することを明らかにした。アメリカには、公共政策の調整役を担っている機関が、CCP以外にも数多く存在している。他方、日本においては、ステイクホルダー間の対立が先鋭化した後も調整者不在により、調整に至らない事例が多数存在している。本研究によって、公共政策をめぐって多様なステイクホルダーが対立するような事例において、大学の研究者または研究機関が調整者として果たす役割があることを日本において問題提起できるような調査結果が得られた。
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