研究課題
若手研究(B)
理論的研究としては、従来のグローバルな熟議デモクラシー理論の再検討を行ったうえで(前期)、ステークホルダー理論を導入し(後期)、より実行可能性の高いグローバル・デモクラシーの基礎理論を構築した。具体的な研究成果としては、平成24年度日本政治学会 分科会D6「グローバル化時代のデモクラシーの擁護」において、研究報告「間接民主主義の位相転換:トランスナショナル公共圏の再埋め込みに向けて」を実施している。そこでは、近年の民主主義の危機の文脈のもとで「第3の民主主義」が模索されていることを明らかにし、トランスナショナル公共圏の可能性と限界を再検討したうえで、民主主義をステークホルダー共同体に再埋め込みすることを提唱した。なお、関連する研究実績としては、『社会と倫理』第27号(南山大学社会倫理研究所発行)に依頼論文として「リビア介入と国際秩序の変容:例外状況による重層化」を掲載し、国際的な人道主義と国際秩序論との関係性も検討した。また経験的研究については、日本におけるネットワークNGOの国境横断的な政策提言活動について、特定非営利活動法人 国際協力NGOセンターの事務局長ならびに政策提言活動担当者に聞き取りを行い、次年度の本格的な調査分析に向けた準備を整えている。ただし、当初予定していた海外調査については、次年度に持ち越しとなっている。
2: おおむね順調に進展している
上記の研究調査活動により、従来のグローバルな熟議デモクラシー理論の特性と弱点の把握、ならびに熟議デモクラシー理論へのステークホルダー理論の導入という、理論的研究の到達目標は十分に達成されたといえる。他方で経験的研究については、ネットワークNGOの組織構成の理解と把握を行っており、次年度以降の調査研究の予備的調査を達成している。なお研究の初年度のため、研究費の主な使途は、関係図書および調査に使用するノートパソコンの購入となったが、これにより基礎的な資料の収集や次年度以降の調査の準備が充実したといえる。
次年度の研究では、当初の予定通り、NGOの政策提言活動の民主的正統性と有効性の検証を重点とする。理論的研究では、NGOの政策提言活動の分析のための参照枠組みの構築を到達目標とする。経験的研究では、EU・イギリス・日本におけるネットワークNGOの政策提言活動の調査とその分析を通じて、リージョナル及びナショナルなレベルでのネットワークNGOの正統性と有効性の析出を行い、より実行可能性の高いグローバル・デモクラシーの規範理論の構築に向けた準備を行う。
次年度の研究費の使用計画は以下の通り。直接経費 物品費 350,000円+200,000円(24年度繰越分)、旅費 500,000円、人件費・謝金 100,000円、その他 50,000円間接経費 3,300,000円
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
『社会と倫理』
巻: 27号 ページ: 83-104