研究課題/領域番号 |
24730122
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
砂原 庸介 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40549680)
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キーワード | 地方政治 / 政党 / 中央地方関係 / 選挙制度 / 地方分権改革 |
研究概要 |
平成25年度の研究実績としては、大阪市・名古屋市を中心に地方議会議員選挙の選挙公報データを収集し、その記述をコーディングして整理した上で、地方議員候補が首長や国会議員との関係を有権者へのアピール材料としてどのように利用しているかを分析した論文(Ken, V. L. Hijino氏と共著)を『レヴァイアサン』にて発表したものがある(「地方政党の台頭と地方議員候補者の選挙戦略-地方議会議員選挙公報の分析から」『レヴァイアサン』53号)。 また、1990年代に進められた選挙制度改革と地方分権改革の影響のもとで、国政における政党間対立と大都市での首長・地方議員の政治的競争がどのように関連しているかを分析し、東京大学社会科学研究所の全所的プロジェクト『ガバナンスを問いなおす』の中で報告した他、その報告をもとにした論文を執筆している。特に大阪についてまとめた論文は、白鳥浩編『統一地方選挙の政治学』で発表した。それに加えて、論文の形態としての発表は行われていないが、地方における選挙制度(区割りなどを含む)が中央・地方の政治に与える効果についての分析も順次進めることができた。 その他、平成25年度には、研究のアウトリーチ活動を幅広く行った。『東洋経済』では、本プロジェクトで研究対象とする政党・選挙と言ったテーマを中心に、最近の政治学の研究成果を一般読者向けに紹介した連載を12回に渡って行った。また、平成24年度に出版した『大阪-大都市は国家を超えるか』の研究成果を新聞・雑誌等の様々なメディアで紹介した他、その後の研究を追加してフォローアップを行うかたちで「なぜいま民意が問われるのか-橋下『大阪都構想』に立ちはだかる地方自治の壁」(『中央公論』2014年3月号)と題する論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に単著の執筆を完了し、予想外の達成を収めたが、平成25年度はその単著についてのフォローアップに多くの時間を割くことになった。アウトリーチという観点からは望外の成果であったと考えるが、その分他の作業に用いる時間が減ることとなったのは否めない。ただ、政令指定都市を中心に、近年の政治的状況をめぐるデータの収集を順調に進めており、また、国政と地方政治の連関という観点から研究発表を行うことができたのは成果として認められると評価したい。平成25年度に進める予定であった政党システムの変化についての理論的な検討はやや遅れているところもあるが、平成26年度での学会発表に向けて整理を進めている段階にある。 以上から、全体としてみれば、概ね順調に進展していると評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでに引き続き、大都市の地方政治と国政の関係についての分析を深めることを目指す。大阪という大都市のみならず、より多くの大都市について議論することが可能となるようなかたちで理論枠組みを精緻化し、地方政治・都市政治の観点から政党システムの制度化について検討していく。平成25年度末に行ったカナダ連邦での政党システムについての調査などを含めて、国際比較に耐えるものを提案したいと考えている。 そのために、平成26年度は複数の学会での報告を予定している。ひとつは日本における自民党一党優位後の政党システムの制度化についての理論的な検討を行うものである。もうひとつは地方選挙での長と議員の相互依存関係について分析したものであり、後者は英語でより広い対象に報告するものとなる予定である。また、理論的な検討を踏まえたものについても、年度末をめどとして英語にして報告することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に予定した調査のための旅費が正確に確定できなかったため。 予定される英語論文の校閲のための費用の一部として使用する。
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