本年度は、次のとおりの実績があった。(1)マレーシアの独立系シンクタンクResearch for Social Advancement (REFSA) ともに、マレーシア財政の主要データのデジタル化および公表を行った。具体的には、マレーシア財務省のEconomic ReportおよびEstimate of Revenueに加えて、内閣府発行のDevelopment Plan文書をPDF化し、REFSAホームページ上での公開準備を進めた。いずれも財政研究を行っていくうえで不可欠な文書である。そのうえで、上記データをもとにデータベースを構築し、過去40年間の歳入と支出についての傾向を明らかにした。特に興味深かったのは、産業構造や一人当たり所得の急激な変化、さらには社会支出の増加にもかかわらず、歳入の構成にほとんど変化がなく、原油由来の税外収入と法人税とがそれぞれ歳入の約3割を占める歳入構造が持続している点である。 (2)平成26年8月、27年3月にそれぞれクアラルンプールとペナンにおいて、予算決定過程の全容把握を目的として、国会議員、州議会議員、経済学者、経済界要人とのインタビューを行った。その結果、①官僚や政党、国会議員からの予算策定過程へのインプットが極めて限定的であること、②各省庁予算は基本的には慣性で決定していること、③予算の優先的配分は、首相が主導して決定していることなどが明らかになった。この成果は、上記(1)と併せて平成27年2月に、世界政治研究会(東京)で報告する予定だったが、研究会開催者の都合のため、7月に延期となった。 (3)最低賃金法および社会保障改革の政治過程について、鈴木(2014)としてまとめた。 (4)アジア通貨危機時の財政政策をめぐる紛争が、その後の政治体制の動態に与えた影響について、増原・鈴木(2014)としてまとめた。
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