本研究は、開発志向国家における財政と民主主義の関係をテーマとしている。1990年代に高度経済成長や健全な財政政策に成功したとして称揚されたマレーシアにおいて、アジア通貨危機以降、財政赤字が持続し、政府債務が拡大している。この背景として、①通貨危機時に景気浮揚策として拡大した財政が、長期政権を担う与党国民戦線の指導者の政治的資源となることで、財政の出口の改革が困難になったこと、他方で、②与党が有権者の支持を失うことを恐れ、増税による歳入基盤の強化が遅れたことが指摘できる。出口改革の遅れは有権者の増税に対するさらなる抵抗感の拡大をもたらしており、財政赤字や累積債務の解消はさらに困難になりつつある。
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