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2012 年度 実施状況報告書

「社会」観における伝統と近代――明治前期の「統治」と「社会」

研究課題

研究課題/領域番号 24730125
研究種目

若手研究(B)

研究機関専修大学

研究代表者

菅原 光  専修大学, 法学部, 准教授 (90405481)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード思想史 / 政治学 / 政治思想史 / 法秩序論 / 明治史 / 統治 / 社会
研究概要

先行研究が所与の前提とし、分析概念として用いてきた「社会」概念の特徴、並びにその政治思想的位置付けを明らかにし整理することを目指し、「社会」という翻訳語の成立に影響を与えた江戸の知的遺産として重要だと思われる、伊藤仁斎並びに荻生徂徠における統治論、「社会」論の特質を考えてきた。特に西周によって最初の訳語として考案された「相生養之道」の起源としての「相愛生養」(「弁道」)という徂徠における用語法の意味を検討することが、24年度の主たる課題であった。
江戸時代から明治前期にかけての統治論の中に含めて考えられていた部分もあったと思われる「社会」論の特徴を理解するためには、近世思想についての理解を深める必要があり、澤井啓一氏が代表をつとめる荻生徂徠研究会での研究会活動を継続してきた。近世思想の専門家達による教示を受けながら史料を読み進め、伊藤仁齋、荻生徂徠、並びにその学派における「社会」観あるいは「社会」的なものへの眼差しについて、研究を進めた。江戸時代に「社会」と呼び得る実態があったかどうか、考察を深めてきたが、それだけではなく、史料会読を中心とする同研究会定例会のみならず、不定期開催の書評会においては、拙著論文も書評対象となり、議論を交わした。今後の研究方針についての有益な道しるべを得ることができた。
西周の出身地である津和野町への出張において、西周関係の未公刊史料の調査を行った。研究に直接寄与するような、予想外の史料を発見するといったことはなく、今後も、さらなる調査が必要だが、同地の民間史家である松島弘氏への聞き取り調査は有意義で、公開されていない晩年の西周の写真などを拝見することができた。
24年度に行った研究の成果の一部は、「【書評】真辺将之著『西村茂樹研究』――明治啓蒙思想と国民道徳論」(『日本歴史』第771号)で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

史料調査のための出張などを予定通りにこなしており、計画通りに研究を進められていると言える。
既に書評論文を1本発表したほか、近刊予定の論文1本を脱稿済みで、さらに脱稿目前の論文を執筆中であり、研究成果の活字化は順調に進んでいる。
ただし、現在までに行い得ている研究は、「統治と社会」というテーマからすれば、準備作業として位置づけられるものであり、未だテーマそのものに踏み込んだ史料調査の成果、考察結果が出ているわけではない。計画段階で想定していたことではあるため、「遅れている」ということではないが、「順調」という語には、まさに、「おおむね」を付すのがふさわしい状況だと言える。

今後の研究の推進方策

「社会」という訳語が確定する以前、最も早くこれに相当する語を発明したのは、西周、津田真道らであり、彼らはそれを「相生養之道」「人間社交之道」などと訳していた。これらの訳語の成立過程、特徴を考察したい。彼らがこのような訳語を考案する際に念頭にあった言語は、“society”ではなく、オランダ語の“maatschappij”であったため、“maatschappij”という概念の特徴、特に西、津田が直接師事したフィッセリングにおける“maatschappij”観を解明すると共に、彼らによる訳語選定の特徴と意義を明らかにすることが必要であり、そのために、津山での津田真道関係史料調査、ライデン大学フィッセリング関係史料調査を行う必要があると思われる。
ライデン大学図書館内の西周、津田真道関係史料並びにフィッセリング関係史料については、そのいくつかの存在と所在がおおよそは確認できているほか、同大学のパラモア教授からの情報提供を受けることができるため、調査時には大きな困難なく史料の収集と閲覧が可能だと思われる。やや困難が予想される19世紀の手書きオランダ語史料の読解については、パラモア教授のほか、図書館司書クーペ氏らの協力を得られることになっている。
また、昨年度からの継続として、津和野での西周関係史料調査、翌年度に行う予定の長崎での福地桜痴関係史料調査のための、予備的な調査も、日程的な都合がつけば、行いたい。

次年度の研究費の使用計画

24年度にラップトップPCを購入予定であったが、新しいOSの安定度が不明だったため、処理速度には難があるものの、既存のマシーンを使いながら購入を控えていた。この購入を控えた分が、ちょうど残額分に相当する形になっている。しかし、同マシーンに搭載しているOS(ウィンドウズXP)のサポート期間の終了を目前に控えているとのことなので、今年度は、新しいOSを搭載したマシーンに買い換える必要があると思われる。残額(B-A)の92,861円は、おおよそ、そのための購入にあてる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 【書評】真辺将之著『西村茂樹研究―明治啓蒙思想と国民道徳論』2012

    • 著者名/発表者名
      菅原光
    • 雑誌名

      日本歴史

      巻: 771号 ページ: 123-125

  • [学会発表] 「古層論」の再検討――古代日本の公共性研究のための手がかりとして2012

    • 著者名/発表者名
      菅原光
    • 学会等名
      The Academy of Korean Studies
    • 発表場所
      The Academy of Korean Studies
    • 年月日
      20121122-20121124

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公開日: 2014-07-24  

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