研究課題/領域番号 |
24730127
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
稗田 健志 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30582598)
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キーワード | 比較政治学 / 比較政治経済学 / 比較福祉国家論 / 新しい社会的リスク / 政党政治 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、経済・社会構造の脱工業化に伴って顕在化してきた「新しい社会的リスク」への政策対応に、有権者の政策選好の多様化を反映して多元化のすすむ政党政治が与えてきた影響を探り、その作業を通じて、脱工業化の下での政党間競争の変容を理論化してきた政党システム論の研究成果を福祉国家研究に応用し、近年の福祉国家の再編成の規定要因を明らかにすることである。研究課題二年目にあたる2013年度は、主に積極的労働市場政策と産前産後休暇・育児休業制度の先進民主主義諸国間での多様性を規定する要因の分析に取り組んだ。 積極的労働市場政策については、「再分配次元における左右軸」および「社会的価値次元におけるリバタリアン-権威主義軸」からなる二次元政策空間上に各政権を位置づけた年次データを説明変数とし、各国が職業訓練、公的雇用創出、求職支援などに費やす公共支出の変化を説明することを試みた。その結果、典型的な積極的労働市場政策である職業訓練などでは左派かつリバタリアンに位置する政権が統計的に有意に公共支出を増やすことを明らかにした。 産休・育休制度の分析では、各国の産休・育休制度の政策動向をトレースした研究をデータソースとし、各国の各政権が産休・育休制度を導入あるいは拡張したかどうかをデータベース化した。各政権が創設あるいは拡張したいくつかの種類の産休・育休制度が政権の党派性と関連するかどうか、現在、分析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、旧来型の再分配の大小をめぐり左派と右派が競い合う一次元的政党競争空間から、環境、フェミニズム、個人主義、移民受入、ナショナリズム、多文化主義などの社会的価値への賛否を巡って戦われるリバタリアン-権威主義の対立軸も影響する二次元的政党競争空間へと変容してきた脱工業社会型政党システムが、子育て支援施策と労働市場政策という二つの政策領域に与える影響を探ることにある。2012年度は研究対象である二つの政策領域うち子育て支援施策で二次元政策空間上の政権の政策位置が影響していることを明らかにした。2013年度は、もう一方である労働市場政策でも政権の党派性が影響していることを明らかにできたというのは、本研究課題の遂行上、大きな進展といえよう。さらに、子育て支援施策の領域でも、産前・産後休暇や育児休業制度の研究に着手することができた。本研究課題がおおむね順調に遂行されていると自己評価する所以である。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は「再分配次元における左右軸」および「社会的価値次元におけるリバタリアン-権威主義軸」という二つの政策次元における政党の政策位置を政党の政権公約を基に把握し、政権の政策位置の時系列での動向を推定した。また、それを説明変数として用い、子育て支援施策に対する政党政治の影響を計量分析した。2013年度は、二次元政策空間上の政権の政策位置が積極的労働市場政策の変化に与える影響を計量分析した。今後は、産休・育休制度の導入・拡張といった「公共支出の対GDP比」のようには計量的に把握できない被説明変数を、ロジット分析を用いるというような方法論的工夫を行い、「新しい社会的リスク」向け社会政策全体について政権の党派性が与える影響を把握していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究上参照すべき書籍の刊行が2014年度にずれ込むなどしたため3万6千円ほど予算を執行できなかった。 第一に、研究発表や情報収集・意見交換のために、社会政策学会、日本比較政治学会、日本政治学会の研究大会に参加する。また、欧州政治学会や欧州政治学会といった海外の学会への参加も検討する。このような学会・ワークショップ参加費・旅費に支出する。 第二に、研究を遂行する上での説明対象の情報を収集するため、国内外の子育て支援施策および労働市場政策に関する文献の収集に支出する。また、比較政治学の最先端の研究水準を把握するために研究書を購入し、データ分析手法の資料の収集にも費用を費やす。 その他として、研究を進めるうえで必要な、英文校正費、抜き刷り作成費、郵送費、プリンタートナー、文房具類などに支出する。
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