本研究は、自然実験(Natural Experiment)と傾向スコア(Propensity Score)解析の2つのアイデアを用いて、市町村合併および市町村の社会経済に関するデータを分析し、地方政府の規模の拡大(市町村合併)が社会経済(民主主義や効率化など)に対していかなる影響を与えるのか、を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するため、平成25年度は、以下の2つの作業を進めた。第1に、前年度に整理したデータを分析した。具体的には、最初に、市町村合併に関するデータや民主性、効率性に関するデータを用いてロジスティック回帰分析を行い、傾向スコアを作成する。そして、合併した市町村(トリートメント・グループ)と合併していない市町村(コントロール・グループ)から、マッチングによって傾向スコアが近いペアを作成した。それを用いて比較分析を行い、規模の拡大が民主性、効率性に与える影響を計測した。分析の結果、地方政府の規模の拡大は、民主主義に対して中立的であること、行政サービスを中心に効率性を向上させることが明らかになった。第2に、研究成果をまとめて学会で公表した。すなわち、5月に日本行政学会にて、6月にCanadian Political Science Associationにて研究成果を報告した。 先行研究によれば、地方政府の規模の拡大が民主主義や効率性に正の影響を与えるのか、負の影響を与えるのか、評価が定まっていなかった。これに対して本研究は、上述のとおり、民主主義に対して中立的であること、行政サービスを中心に効率性を向上させることを示したことが研究成果である。特に、先行研究では、負の影響を与えるという研究が多かった民主主義への影響に対して、本研究では負の影響を与えるわけではないという結果を示した。このことの意義、重要性は高いと言える。
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