研究課題/領域番号 |
24730134
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
相沢 伸広 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (10432080)
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キーワード | 比較政治 / 東南アジア / 地域研究 / タイ / インドネシア / 都知事 / 空港建設 / 災害対策 |
研究概要 |
2年目の平成25年度は、第一にスワンナプーム空港建設にかかるアクターの詳細なデータベースを元に分析した成果を「バンコク二空港と2011年大洪水」船津鶴代・玉田芳史編『2011年大洪水とタイ』所収(2013年9月出版)として発表した。前年度の分析において精査した様々な関係機関のデータベースをもとに、バンコク・スワンナプーム空港建設にあたる政治過程の特徴を分析するにあたって二つの比較分析を行った。 第一に、昨年度の研究から、バンコクでは建設にあたって洪水対策が極めて重要なファクターであることが明確になった。そのため平成25年度は洪水をはじめとする災害対策と空港建設を巡る決定過程についての比較調査を行った。その時、スワンナプーム空港の特徴を分析する上で有効となったのは、バンコクのドンムアン空港との比較であった。タイ空港公団(AOT)の支援、およびタイの農業・協同組合省灌漑局の支援を受けてドンムアン空港の災害対策、および、スワンナプーム空港の災害対策関連資料を得て、両者の比較分析を重点的に行った。 第二に、バンコクとジャカルタの都行政と空港建設との関係について比較分析を行った。空港建設の一部として重要なのは空港へのアクセス手段の整備である。ここでは空港アクセス鉄道に焦点をあて、その建設にかかる様々なコストを誰がどのように負担するのか、という点についてケーススタディを行った。とりわけ、空港建設の最大の受益者となる都民のコスト負担について、都知事の権限、バンコク、ジャカルタ両都知事選の選挙キャンペーン、中央-地方政府間の空港アクセス鉄道建設における権限分配、費用負担交渉を分析した。なおこれらの成果は一部、2013年オーストラリア政治学会研究大会、および、 米国、ワシントンDCの世界銀行にて"The Tale of Two Governors" として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年は主たる調査地であるタイにおける政情が悪化した。とりわけ、調査を予定していた運輸省などが激化する反政府デモの対象となり一時機能不全に陥った。加えて各調査対象機関の人事が、政局の激変に応じてめまぐるしく動いた。タイ空港公団、タイ国際空港の代表者らも、政治状況に左右される形でしばしば更迭、辞任し、当初協力を約束していた関係者らも連座する形で担当部局を変更させられる等の影響をうけた。その結果、当初25年度予定していたバンコクでの調査が実行できず、インドネシアでの調査を前倒しして行った。そしてバンコクでの調査は26年度に持ち越す予定の変更を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1年目、2年目に収集した資料および作成したデータベースを基礎として、まず、① 2002年の空港公団(AOT)の株式公開。② 空港公団からの分離特別組織、「新バンコク空港建設公団(NBIA)」についてバンコクでの調査を行う。次にあわせて東京において主要関係機関であるJICAの関係者への聞き取りとあわせ、タイー日本間の関係がもたらした役割について調査する。その上でこれらの成果をまとめて、段階的に投稿論文として発表する。 また、すでに資料収集を終えたナコン・スワンナプームプロジェクトについての研究成果もあわせて発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイの政情不安により、当初計画していたバンコクにおける調査の実行延期を余儀なくされた。とりわけ主たる調査先として計画していた運輸省やタイ空港公団、タイ国際航空において、反政府デモの突入による機能不全、そしてめまぐるしい政局の変化のため調査協力者の人事異動が相次いだことでバンコク調査を控えたため。 25年度より、26年度に繰り越した分については、そのままバンコクでの海外調査費用にあてる。また、所属機関変更に伴い、これまで行っていた東京での調査継続のため、26年度は国内調査費用に用いる。
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