本研究の成果は、国際ハブ空港という現代国家の物理的な玄関口をめぐる国内政治、国際政治について、タイ政府内の各政府機関の一次資料に基づいて実証研究を行ったことにある。大きく三つの対立軸から政治分析を行った。第一に、中央政府と地方政府の政治的対立。第二に運輸省対国軍といった中央政府内の省庁別の対立。第三に、ICAOなどの国際ガバナンス組織と国内の監督官庁との対立である。これらの対立を巡る政治的力学の変化を読み解くことで、1970年代から2010年代のアジアの秩序構造の変化と交通技術革新に伴い、バンコクの地政学的な位置付けが変化し、そのことが大枠のタイの政治のルールを定めていく様子が明らかとなった。
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