研究課題/領域番号 |
24730135
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小浜 祥子 北海道大学, その他の研究科, 准教授 (90595670)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際紛争 / 停戦 / 領土変更 / 国際情報交換 / アメリカ |
研究概要 |
1.平成24年度はまず紛争や停戦についての文献の整理を行い、既存の研究の問題点や本研究の位置づけについて検討を行った。その結果、本研究のような視点で紛争後の停戦を扱った研究が未だ公刊されていないことが明らかになった。また本研究が着目する戦後の資源利用に関連して、より幅広い文脈で資源と紛争の関係について言及した研究を発見し理論構築に活かすことができた。 2.既存研究の問題点をふまえ、紛争後の停戦維持についての理論構築をゲーム理論を用いて行った。モデルを仮構築した後、9月にアメリカのニューヨーク大学やヴァージニア大学の研究協力者と極めて有意義な意見交換を行いモデルの修正を行った。修正後のモデルについて日本国際政治学会年次大会や東京大学などで研究報告および意見交換を行い、さらにモデルに改変を加えて概ね完成に至った。 3.モデルの結果を統計的に検討すべく、データセットの構築を行った。先に構築した理論の予測をふまえて、紛争の結果として領土変更がなされたケースについてCorrelates of War (COW)プロジェクト等によって提供されている複数のデータセットを組み合わせ、それに自身でいくつかの変数を加える形でデータセットを作成した。 4.新しいデータセットを用いて統計的分析を行い、理論の予測と整合的な暫定的な結果を得ることができた。 5.既存研究の整理、理論構築、新しいデータセットに基づく統計分析の暫定的結果を基に論文“Lasting Peace and Post-Conflict Resource Exploitation”を執筆し、平成25年3月に京都大学にて研究報告を実施した。そこで得られたフィードバックは次年度の研究の発展につなげていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において、平成24年度は紛争や停戦に関する文献の整理、戦後復興に関する不確実性が戦後の平和に与える影響および対外援助の有効性に関する理論の仮構築、および統計分析のためのデータセットの構築を行う予定であった。 まず、紛争や停戦に関する図書・論文を収集し、読了・整理した。それに基いて論文の「イントロダクション」を概ね完成させた。ただし、領土紛争についての大型資料集や購入予定であった関連書籍で公刊が遅延しているものがあるため、これらについては次年度以降に補足する予定である。 理論構築についてはモデルを仮構築した後、アメリカの研究者との意見交換や学会・研究会報告で得たフィードバックをふまえて改変を重ね、概ね完成している。まずは戦後復興に関する不確実性の問題について集中的に取り組み、それに関する統計分析と論文の執筆を優先させることとしたため、対外援助の有効性に関しては次年度以降に継続して取り組む予定である。 統計分析のためのデータセットの構築も順調に進行した。その際、先に構築した理論を生かして分析の焦点を絞込み、かつ既存のデータセットを駆使することで効率的な作業を行うことができた。その結果、データセットの構築のみならずデータの分析についても暫定的ではあるが、少し進めることができた。データ分析についてはまだ改善すべき点が多々あるので当初の予定通り、次年度に重点的に取り組む予定である。 以上の通り、本研究に係る作業は概ね当初の予定通りに進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成25年度も引き続き紛争や停戦・対外援助に関連する図書を購入し、研究に生かしていく。事例研究で扱うアラブ・イスラエル紛争についても近年公刊された外交史研究を新たに収集する。 2.また、当初の計画通り前年度に引き続き統計分析による仮説検証を重点的に行う。前年度末の研究報告で指摘を受けたり、分析を行う中で追加収集すべき変数が見つかっているため、これらについては適宜データセットに追加していく予定である。精緻な仮説検証のためにはデータの分析から得られた知見を生かしてデータセットをさらに充実させていく必要があるため、データの収集と分析の双方に目配りしつつ柔軟に作業を進めていく。対外援助についての分析については、データの分析を優先させたためにまだ不充分な点が残されているので、平成24年度に引き続き、理論的な検討とデータの収集を行なっていく。 3.統計分析で充分な成果が得られた後には、当初の計画通り、事例研究とそれに係る資料集を行う。事例として扱うアラブ・イスラエル紛争(1965~1973年)に関する資料の大部分はこれまでの研究業績を公刊した際に収集・検討しているが、本研究では以前の研究とは異なる側面に光を当てているため、国内外で資料を再調査する必要がある。 4.研究の過程では国内外の研究者との意見交換や国内・国際学会での成果発表を行い、そのフィードバックを生かして本研究を世界的な水準に引き上げるべく努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究では紛争の再発と領土や天然資源の関連に着目していたが、入手予定であった紛争と天然資源に関する6巻組の大型資料集や最近の研究業績で未刊のものがあるため、それらの購入が平成25年度にずれ込む予定である。これらの書籍についてはすでに予約発注を済ませている。 また、平成24年度には、理論の知見を上手く生かして焦点を絞り込みつつデータ収集を行った(あらゆる紛争を扱うのではなく領土紛争に着目した)ことに加えて、既存のデータを効果的に組み合わせることに成功したため、アルバイトを雇用せずにデータセットを仮構築することができた。データの一般的なトレンドを掴むために、まずこのデータセットを用いて分析を進めたところ、概ね良好な暫定的結果が得られたが、より厳密な仮説検証のための課題も明らかになった。具体的には紛争の結果として帰属が変更された領土の特質(資源の有無など)や停戦条約の内容について新たにデータを収集する必要が生じた。これらについては先に述べた資料集が未入手であること、現段階の分析についてさらに深く検討してから今後の方向性を決定することが適切と思われたため、平成24年度の予算を次年度に使用することとした。この分は、データ収集に必要な資料集の購入やデータ入力のアルバイトを雇用費として使用する。以上のような変更を含め、平成25年度は紛争や天然資源資源に関する図書の購入、データの追加収集と分析、事例研究のための調査を行なっていく。
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