研究課題/領域番号 |
24730139
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阪本 拓人 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40456182)
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キーワード | 破綻国家 / 紛争 / 平和構築 / マルチエージェント・シミュレーション / 地理情報システム / アフリカ |
研究概要 |
越境関係と国家破綻との関係を明らかにすべく、本研究では、地理情報システム(GIS)データを介して現実国家と緊密に対応付けた仮想的国家において、越境関係(近隣諸国との関係や国境外からの社会集団・政治集団の影響)を中心とする条件を広範に操作しながら、マルチエージェント・シミュレーション(MAS)を展開する。今年度は、前年度に引き続き、研究補助者の助力のもと、このシミュレーションを行うための基盤整備、すなわちGISデータの整備拡充とMASモデルの仕様拡張に取り組んだ。また、地域研究者・実務家との交流の機会を積極的に求め、さまざまな有益な助言やアイデアも得ることができた。特に、日本アフリカ学会第50回学術大会特別フォーラムにおいて、人類学や経済学、歴史学といった多様なバックグラウンドを持つ若手のアフリカ研究者とともに、研究発表を行ったことは、こうした点で大きな意義を持っている。さらに、本研究の土台をなす、仮想国家を用いた紛争と国家破綻の研究を包括的に紹介する英文の論文も公刊するなど、これまでの研究成果の公開も積極的に図った。最後に、年度末に行った国際関係論研究会第190回定例会の報告では、本研究が対象とする北東アフリカ地域の国際関係において、今日無視できない影響を及ぼしている国境地域の牧畜民共同体に焦点をあて、その動態を分析する新たなシミュレーションモデルを披露した。来年度は、こうした成果に依拠しつつ、仮想国家のなかで越境関係を具体的に実装し操作化していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GISデータの精度向上、仮想国家の紛争動態を並列的に相互作用させるモデルの仕様拡張といった、前年度から持ち越された研究作業に時間が割かれた結果、交付申請書において平成25年度の目的のひとつとして掲げた仮想国家でのシミュレーションが、予備的なものを除いて、十分に実行できていない。他方で研究成果の公開と学術交流の推進についてはおおむね順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行の土台となるGISデータおよびMASモデルについては整備のめどが立ってきたので、これを完遂の上、できるだけすみやかにシミュレーションそのものの実行に移りたい。また国家破綻に影響を及ぼす越境関係については、国境地域の牧畜民共同体の動静など新たな切り口からの把握・分析も行っていきたい。
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