越境関係と国家破綻との関係を明らかにすべく、本研究では、地理情報システム(GIS)データを介して現実国家と緊密に対応付けた仮想的国家において、越境関係(近隣諸国との関係や国境外からの社会集団・政治集団の影響)を含む条件を広範に操作しながら、マルチエージェント・シミュレーション(MAS)を展開してきた。研究課題最終年度となる今年度は、三年間の研究成果の総括に重点を置き、スーダンやソマリアの紛争と国家破綻に関するMASとその結果をまとめた論文を執筆・公表するなどした。いずれのシミュレーションとも、平和構築のための制度設計や政策介入の効果の検証を含む、政策指向性を備えた内容になっている。また、新たな所属研究機関のアジア経済研究所において、これまでの研究内容を包括的に報告する機会を得、地域研究や開発経済を含む多様な分野の研究者から貴重なコメントを得ることができた。さらに、年度後半の11月からは、交付申請書に記載した計画の通り、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)に滞在し、紛争研究者を含む多様な研究グループと交流を進めるとともに、MASとその適用に関する最新の知見の取得に努めた。所属チーム(Professorship of Computational Social Science )には、本研究と同様、MASとGISを用いて武力紛争を分析している研究者がいるため、最終年度の研究の推進にあたって大きな刺激になった。
|