研究課題/領域番号 |
24730145
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡邉 智明 九州大学, グリーンアジア国際リーダー教育センター, 助教 (00404088)
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キーワード | 環境規格 / 標準化 / グローバル・ガヴァナンス / EU / ドイツ / 国際政治 |
研究概要 |
平成25年度においては、前年度における作業を踏まえて、2000年代以降の環境規格の標準化政策策定に向けた各アクターの動向、特にEUやドイツの政策当局者の選好や戦略を確認することを計画していた。 この計画実施のために、まず国立国会図書館における関連資料の収集を行った。加えて、ヨーロッパにおける調査においては、主にベルギー・ブリュッセルのEC中央図書館、およびドイツ・デッサウにおけるドイツ環境局図書館(Fachbibliothek Umwelt, Bundeamt)における関係資料を収集した。特に後者においては、DIN(ドイツ標準化機構)およびドイツ連邦環境省との協力関係についての文献収集という点において成果を得ることができた。 また、前年度の研究状況を踏まえて、以下の研究会、学会報告を行った。九州政治研究者フォーラム(2013年9月、霧島市)では、「グリーンな競争政策?―環境規格のグローバル標準をめぐる政治」というテーマの下、EUがグローバルな標準化戦略を展開する背景について報告を行った。また、グローバル・ガバナンス学会(2013年9月、駒沢女子大学)では、「標準規格の国際化をめぐる公的、私的制度の交錯―EUの環境規格の国際標準化戦略を事例に―」という題目で、研究成果の発表を行った。これらの学会・研究会参加者との討論を通じて有益な示唆を得ることができた。特に、各国、EUレベルの諸機関との間でのイニシアティブの取り方およびその捉え方について、理論上の説明が不十分との指摘は、次年度以降の研究調査を行う中でさらに検討すべき点であると考える。 さらに、EUが域内の政策を踏まえて対外政策を展開していく政治過程および法的枠組みについて、最近の研究動向の整理を行い、九州大学法学府紀要『九大法学』において論文を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度においては、国内外における政策文書の資料収集作業においては、DIN資料の確認などにおいて概ね予定通り進展した。特に、EUレベルにおける標準化の検討時期やドイツ国内における環境分野に標準化に関する官民の協力関係に接近する資料が得られることは大きな意味を持つと考えられる。 他方で、前年からの課題である関係者への聴き取りについては、調査日程との関係もあって本年度も必ずしも十分に行うことができなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、ヨーロッパ標準化システムの形成過程における非国家アクターの動向を確認することを主な目的とする。 この目的達成のための具体的な作業としては、以下の2つが中心となる。まず第1に、EUレベルにおいて積極的に活動を行っている環境市民団体(ECOS)やそれに関連したドイツのBUND(ドイツ環境・自然保護連盟)傘下の標準化セクションなどのNGOに関連する資料の収集および関係者への聴き取りの作業である。第2に、EUレベルにおける標準化に関して活動しているビジネス・ヨーロッパの該当部門やドイツの経済界や標準化機関の動向に関わる資料の収集および聴き取りである。 これに関連して、平成26年度は、前年度までと同様、ドイツ、ベルギーを含めたヨーロッパにおける滞在して調査を行う予定であり、最大2回、最長3週間程度の期間を想定している。また、国内の関係学会参加に合わせて、日本国内における関係資料の収集も行う予定である。 さらに、当年度は、IPSA(世界政治学会)や環境法政策学会への積極的な参加を通じて、これまでの研究成果について、環境政治あるいはEUの研究者と意見交換する機会を持ちたいと考えている。 さらに、研究計画最終年である平成26年度においては、理論上の考察を行い、EUの環境規格分野から見た標準化戦略に関する本研究課題の総括を行い、公刊論文として発表することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用が生じた理由としては、第1に、旅費に関して、平成25年度計画においてヨーロッパ(ベルギー、ドイツ)の調査として計上したもののうち、航空券が想定より安かったことである。第2に、人件費に関して予定していたインタビューが完全に実施できなかったため、想定していたドイツの専門家であるコーディネーターを使用しなかったことである。また、物品費に関しては、複写依頼の活用など通じて、想定より書籍代が安く済んだことである。 平成26年度に関しては、ヨーロッパにおける調査を十分な時間を割いて行う予定であり、これに関連してコーディネーターの活用を予定している。また、物品費に関しては、平成25年度調査において新たに必要性を認識した書籍の購入を予定している。
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