研究課題/領域番号 |
24730146
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
バールィシェフ エドワルド 島根県立大学, 総合政策学部, 助手 (00581125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日露関係史 / 第一次世界大戦 / 国際関係史 / 軍事協力 / 武器供給 / 対外政策 |
研究概要 |
2012年度において、研究実施計画に沿って、7月16日から同22日の間、史料収集の一環として、東京の研究出張を行い、国立国会図書館などで史料を閲覧・複写することによって研究体制を補強した。さらに、8月26日から9月8日の間、スタンフォード大学フーバー研究所を訪ね、遂行中の研究を進展させるために欠かせない「ポドチャーギン・コレクション」などの史料を多量に閲覧・複写できた。予想したとおり、先行研究でほとんど利用されていなかったこのコレクションはロシア政府が第一次世界大戦期に日本で行なった武器軍需品調達事業を広範にカバーしており、「日露兵器同盟」の実像に大きな光を当てている。現在、その史料の熟読・整理に取り掛かっており、今後の研究計画の更なる具体化を図っているところである。 本年度において、研究テーマに関する新たな論考を公表することはなかったが、戦時中の日露軍事協力問題を総括している論文をまとめ、アメリカ合衆国の学術雑誌「Kritika: Explorations in Russian and Eurasian History」に投稿した(現在、査読中)。この論考のなかで、日露関係における軍事協力の問題を、第一次大戦全期を通して観察し、武器発注・供給活動の主要なアクターを浮き彫りにすることができた。さらに、カナダの季刊学術雑誌『パシフィック・アフェアーズ』から、2012年に発行され、本研究に直接に関わっているピーター・バートン著『Russo-Japanese Relations, 1905-1917』への書評が依頼されたので、現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度の研究過程において、「日露兵器同盟」の本質とその実況、そして「帝国主義時代」における両国の政治経済的な状況の更なる解明に寄与しうる膨大な資料群を発見した結果、今後の研究の方向性が具体化し、新たな研究テーマが明確化してきた。さらに、豊富な史料を手に入れることにより、新しい研究課題を発見したとともに、事例研究から総括研究に移行しうる条件をつくってきた。フーバー研究所文書館などで手に入れた「ポドチャーギン・コレクション」の資料はロシア陸軍省の対日発注・検査活動に少なからぬ光を当てているだけでなく、本研究の内容を厚くし、その規模を大きくしているから、フーバー研究所への研究出張は本研究プロジェクトの遂行という観点からすれば、大きな意義があったと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
ロシア陸軍省の在日武器軍需品調達事業に関わる豊富な史料を整理し、第一次大戦期の日露軍事的・経済的な関係に関する多種多様な情報を総括するとともに、「日露兵器同盟」の実況とその諸問題をより広い国際政治経済的な文脈のなかで捉えていく。さらに、日本陸海軍当局が関与した対露武器軍需品供給活動の諸問題をより詳細に分析し、三井、大倉、高田、久原などの日本の商社の関わりあいとその対露貿易戦略を考察していく。または、ブリネル商会の事例をより深く検討すると同時に、他のロシア側の「御用商人」の関わりあいを明確化していく予定である。以上の研究活動と同時に、日露軍事協力におけるロシア海軍省と財務省、ロシア赤十字社と義勇艦隊、東中鉄道および露亜銀行などの位置に光を当てる新史料の発掘作業を続けていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度のスタンフォード大学フーバー研究所への研究出張は大きな収穫をもたらしたので、「日露兵器同盟」の問題を戦時中のロシア政府による在外武器軍需品調達活動およびロシア=英仏伊日米間の軍事経済的関係という幅広い文脈に載せるために、もう一度フーバー研究文書館を訪問し、「在米ロシア陸軍武官コレクション」を中心として、史料収集を行う予定である。それによって、同時代の日露関係と国際政治経済体制というテーマに関わる様々な問題を解決することができると考えられる。特に、米国による対露武器軍需品供給事業を検討するにより、ロシアの在外武器軍需品調達体制における日本の位置をより正確に解明しうると確信している。 さらに、元の研究実施計画に沿って、次年度において、サンクトペテルブルグ(RGIA, RGAMF, VIMAIViVS)とロンドンの諸資料館(SSEESL, National Archives等)を訪問し、史料が不足している側面を補う予定である。
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