本研究プロジェクトの最終年度において、設定された研究目的や研究課題に沿って、史料収集を継続しながら、今まで収集した史料の整理や調査を通して、第一次世界大戦期における《日露兵器同盟》という現象の解明に努め、総括的な考察の具体的な方向性や成果発表の手段のことを真剣に考えた。 史料収集活動の一環として、2015年9月にロンドンとモスクワの諸文書館を訪ね、以前閲覧できなかった史料群の調査を続けると同時に、研究対象に新たな光を与えうる史料群の有無を調査していた。特に、《日露兵器同盟》の背景にある財政・金融問題に関わる史料に関心を有していたため、イギリス外務省の記録、日露間の兵器代金取引に携わっていた有力な商会等の貴重な記録を検討し、《兵器同盟》の財政的な背景について調べていた。さらに、モスクワに保存されてある駐日ロシア陸軍武官の記録も継続的に閲覧し、検討していた。その他、日本における同類の記録の有無を検討した結果、改めて活用できる有益な史料群に目をつけることができた。 本研究プロジェクトの最終目標である研究書の出版を真剣に考慮しながら、テーマ関連の先行文献を収集し、これを批判的に検討した。職務上の関係で、《帝国主義時代》における日露協力関係を対象とする本テーマで、今年度中に総括的な研究書をまとめる余裕がなかったものの、収集した史料を生かしながら、関連テーマを対象にして、事例研究の形で著書を完成した。
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